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第460回 ~米国の為替報告書と債務上限~

2021年12月08日

ちょうど2週間前(11/26)に4年10か月ぶりの円安となる115.52円を付けたあと、突然の不意打ちの如くオミクロンショックが地球を襲い、株、金利、ドル円とも急落、いわゆる全売りの状態で、週明け(11/30)には112.53円まで円高となった。新型コロナは恐ろしいとのトラウマが体に染みついているため、ともかく、君子危うきには近寄らず、逃げるが勝ちとの行動であった。

その後、既報の通りパウエルFRB議長のタカ派発言でドル下げも持ち直したかのように見えた。しかし不安定を嫌う市場ではドル買いの勢いは戻らず、その後8日間も114円には届かずに、今日まで112.53円~113.95円で気迷い相場が続いている。先週末12/3の米雇用統計も100%満足できる結果とならず、今や、来週のFOMCを待ち焦がれるばかりとなっている。

その雇用統計であるが、いわゆるヘッドライン(21万人、4.2%)では判断が交錯する結果であった。非農業部門雇用者数は予想(55万人)に比べ、いかにも物足りない。今年一番少ない増加幅となった。結果、ドル円は低下でスタート。一方、失業率は前月比0.4%低い4.2%とパンデミック前の2020/2(3.5%)以来の低さとなり、一瞬目を疑ったほどであった。先週紹介した、人種別の失業率、労働参加率とも大きく改善が見られたことで、完全雇用と言ってもよいとの見方が出て、ドルは反転、これでドル安に歯止めがかかった、と思われた。総じて高評価となった雇用統計であったが、結果はプラスマイナスゼロと言うことで中立との評価、やはり、来週のFOMC待ちとなった。

ところで、12月3日は、そのほかにも米国発で為替市場に重要な進展があった。ただ、いずれもすぐに相場に影響を及ぼすことはなかったが、今後の変動要因として頭に入れておかなければならない材料なので、取り上げておきたい。最初は、2022年予算案の審議状態である。

米国予算は10月から翌年の9月までの1年間だが、今年10月から始まった2022年予算が成立していない。そこで、10月につなぎ予算として12月3日までの暫定予算を決めた。それは債務上限の期限が到来することも意味する。ぎりぎりになってその債務上限条項を除いて、2022年2月18日までつなぎ予算の再延長を決めた。イエレン財務長官が12月15日まで資金繰りはやりくりできるとの表明があったからだ。

そこで、債務上限問題であるが、このままでは米国のデフォルトに結びつく事態もあると、市場では身構えていたが、米国で昨日、大きな進展があった。共和党の上院トップのマコネル院内総務が譲歩し、民主党単独での引き上げを可能にする別な法案を否決しなかったことで、デフォルト、政府閉鎖を回避できる道筋ができた。15日まで債務上限引き上げが決定されると市場は安堵している。ただ、これは共和党の貸し、今後の政権運営、予算審議に影響は避けられないとの懸念材料ともなる。

もう一件は、年2回財務省が議会に提出する為替報告書が公表されたことである。特に毎回注目されることは、為替操作国に中国が認定されるかどうかである。結果として、今回も認定なし、但し監視リスト国には含まれていた。今回の監視リスト国は前回(2021年4月)より1か国増えて12か国になり、日本も含まれている。この報告書は、米国政府の伝家の宝刀の一つであり、為替面、貿易面で、米国が不利と判断された場合に、制裁を審議するための法的根拠になる。今回は為替相場に影響なし、だが、今後とも外せない報告書である。

さて、来週は、米日欧英中央銀行の政策決定会合が行われる。それまでの1週間の相場見通しは、ドル円は先週と同じく112.80~114.50円と予想。一方ユーロは、対ドルは同じく1.1200~1.1400、対円では127.00~129.00円とユーロ安を予想。英ポンドは1.3200~1.3400とポンド安を予想する。

(2021/12/8, 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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