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第461回 ~パウエルの奥の手~

2021年12月15日

今晩は、眠れないかもしれない。金融市場関係者にとってそれほど重要なイベントがある。米国中央銀行FRBの金融政策決定機関であるFOMC(連邦公開市場委員会)の結果発表日である。昨日からの二日間の会合で、今日は声明文と合わせて経済見通し、金利見通しを示すドットチャートが発表になる。

11月の会合で、テーパリング(市場への資金供給のために購入していた債券の毎月購入額を削減するオペレーション)の開始を決め、11月よりまず2か月間だけ、150億ドルの削減を始めた。2020年3月より、毎月1200億ドル(国債800億ドル、住宅担保債券400億ドル)購入していたが、11月から8か月かけ毎月の積み増し分をゼロにすることを決定した。

それを今回のFOMCでは、テーパリングを加速、すなわち削減金額を増加させるのではないかという見方である。最近のパウエル議長がこのような趣旨の発言があったことや、最新の物価データからこの加速が極めて現実的な政策変更として浮上してきた。具体的には削減額の倍増(毎月150億ドルから300億ドル)を予想する声が多い。11-12月で300億ドル減額されているので、残りは900億ドル、このペースにすれば、来年3月に終了することになる。

一方で、FRBの物価上昇に対する考え方も変更される確率が高い、これまで物価上昇を「一時的」としていたが、この表現を撤回することが予想されている。この大きな要因が、ここ2か月、物価が大きな上昇を示したことだ。11月消費者物価(CPI)は6.8%(年率)と39年半ぶりの上昇率となり、昨日発表になった生産者物価(PPI)も1980年以来の上昇率となった。

失業率も4.2%と完全雇用ともいえる低水準になり、FRBにとって金融政策の転換を目指す環境が揃ってきた。とすると次のターゲットは利上げとなる。前回のドットチャート(DC)では、利上げは2022年に2回実施と見通されたが、このままでは済まないのでないか。今、市場での観測は利上げの前倒しだが、テーパリング終了の時期と合わせて、早ければ3月(16日)に1回目の利上げも視野に入ってくる。

それまでの物価動向に加え、新型コロナの収束具合にも影響を受けるが、現在の三つの課題(供給制約、人材不足、資源原材料価格高騰)の状況を考えると、物価上昇は川上から川下へのシフトが起こることが容易に想定されており、利上げ環境が整ってくるとみている。
ところで、金利引き上げについて、もう一つの手段がある、それはターゲットをバンド(レンジ)でなく単一金利にすることである。すなわち、現在の0-0.25%でなく、0.25%にすることである。市場への影響を少なくし、かつFRBの引き締め開始のメッセージを出すという、ある意味一石二鳥を狙えるのではないだろうか、これこそパウエル議長の奥の手かもしれない。どちらにしても、ドル買いバイアスのかかりやすい環境である。たとえ小売売上高が低い数字であっても、それは下値拾い(Buy on dips)の絶好のチャンスになると考えている。

ところで、先週、取り上げた、米国債務上限問題は、とりあえず今回は決着がついた。上院で2.5兆ドルの引き上げが可決された。下院の議決を経て、大統領が署名すれば、引き上げが発効する。この金額があれば、2023年1月まではデフォルトの心配がないといわれているが、この前に2022年11月に中間選挙があり、共和党は、次回は簡単には妥協しないと、今から宣戦布告ともとれる発言が聞こえている。しかしまずはドル売り要因が消えた。

さて、今日からは、米日欧英中央銀行の政策決定会合が行われる。今後1週間の相場見通しは、基本的にはドルの強含みを予想し、ドル円は113.00~115.00円。一方ユーロは、対ドルは1.1150~1.1350ドルとユーロ安、対円では127.50~129.50円とユーロ高を予想。英ポンドは1.3200~1.3450ドルと小幅ポンド高を予想する。

(2021/12/15, 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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