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第469回 ~米国QT加速の確率高める米経済~

2022年02月09日

怒濤の1週間を終えた。ECBでユーロは跳ね上がり、米国雇用統計でドルは急伸、ドル円は再び115円台へ上昇した。年初来高値(116.35円)には及ばないが、115円後半を覗く展開が始まった。月初の重要な経済統計はこれで一段落したことで、これからはインフレ動向を主に米国の景気動向、そして地政学的リスクへの警戒に注目が移る。

まず、英国中央銀行(BOE)の0.25%利上げは予想通りであったが、ECBラガルド総裁から予想以上のタカ派発言があり、ユーロは急反騰、あっという間に3週間前の高値に並ぶ1.1484まで買われた。これまでPEPP(パンデミック緊急購入プログラム)の3月終了など量的緩和については徐々に解消する意向は示しているものの、量的引き締めについては、少なくとも公式には発言していなかった。

しかし今回は、年末までには利上げを実施すると思わせる会見内容となったことを、市場は予想外と受け止め、投資家心理は急転、引き締めに向けた対応を余儀なくされることになった。欧州景気動向に大きな後退が見られない限り、これからはユーロが下がりにくくなるであろう。そして今後は、ますます米欧の金融政策差、特に金利差動向、引き締めペースの違いが、ユーロ相場を左右させることになると予想する。

一方日本(日銀)は、最近の黒田総裁発言にも表れているように、引き締めの動きは政策当局からは全くと言ってよいほどない。しかし市場では10年債利回りが約6年ぶりの高値となる0.21%まで上昇と、利上げ催促相場とも言える状態になっている。日本も日常製品の値上げが始まっているので、物価の上昇は起こるであろうが、欧米の5-6%には遠く及ばない。この点で円が買われる要素は乏しい。

次に、米雇用統計であるが、市場の予想を大きく上回る結果に、米国金利は急伸した。3月のFOMCでの利上げはほぼ間違いないとの見方から、特に政策金利変更に敏感な2年債金利は1.3%台へ急上昇、新型コロナ発生前の水準に完全に戻った。今日現在の3月FOMCでの利上げ確率は、シカゴ商品取引所の先物価格で計算すると、0.25%以上引き上げ確率が100%で、0.50%への引き上げ確率も24%ある。CPI(後述)の結果次第では、0.50%への引き上げ確率は高まっていくであろう。

話戻って、雇用統計の内容を見ると、非農業部門雇用者数(NFP)は46.7万人(予想は17.5万人)で、前2か月の改訂分を合わせると、実質117.6万人と大幅な増加を示した。この増加分には、労働省が行っている年間改訂(+21.7万人)が含まれているので、雇用環境が完全に変化した、とは受け取れないが、労働参加率も62.2%と先月の61.9%から上昇し、増加傾向を維持していることは確実である。

合わせて市場を驚かせたのが、賃金の上昇率である。前月比で+0.7%(予想+0.4%)と増加し、年率では+5.7%(先月+4.7%)へ大幅な上昇となった。この賃金上昇に合わせて、物価の上昇を占う指標、消費者物価指数(CPI)が明日10日に発表になる。予想は総合で+7.3%(先月+7.0%)、コアで+5.9%(先月;5.5%)となっている。まずはこの指標を見ることになるが、個人消費動向はGDPの約70%のシェアを占めているので、合わせて小売売上高(2/16)にも注目したい。

今後1週間の相場レンジ予想は、ドル円は、114.25~116.25円、一方ユーロは、対ドルは1.1380~1.1580、対円では131.00~133.00円のユーロ高、英ポンドは1.3450~1.3650と、ポンド高と予想する。

(2022/2/9, 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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