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第472回 ~まだ市場の異変は終わらない~

2022年03月09日

実に波乱に満ちた1週間であった。ロシアのウクライナ侵攻が止まらない。2月24日侵攻開始時は「砲弾の音が聞こえたら買い」というアノマリーの下、相場の下落はこれまでとばかり、株価や欧州通貨の底打ちの気配が見えた。例えば一番懸念が高まると見られたユーロ、ポンドは翌日から2日間は、下がっても上昇しての引けが続いた。しかし押し上げる力はそれまでであった。

一向に治まらない、いや、それ以上にロシアのウクライナ支配地域の拡大を受けて、ユーロ、ポンドは下落を続け、今や両通貨共2020年11月以来の安値水準となっている。ユーロは1.0806まで下落、ポンドも1.3082まで低下。ユーロは1.0800を割ると、1.0635が次のターゲット、そして2017年3月の1.05が見えてくる。またぞろ、パリティ(1ユーロ=1ドル)が話題に上ってくるかもしれない。そしてポンドは1.30割れとなれば、次のターゲットは2020年11月以来の1.2850となる。それほどまでに今回のロシア危機を、深刻に受け止めている。

また、ロシアの格付けはもはや最低レベル。昨日はフィッチが「C」まで引き下げ、もはやロシアはデフォルト(国家破綻)目前だ。何よりも決済通貨の不足により、いわゆる血液の流れがかなり細くなっている。

すなわち裏返しでいえば、「有事のドル買い」の威力がさく裂しているともいる。ドルインデックスは7日には99.418まで急上昇。2020年5月以来の100が目前だ。米国の表に出ない戦略が、ドルの価値を高めているからだ。SWIFTからロシア銀行の排除、ロシア中央銀行との取引停止等、金融制裁の効果はロシアの国力を相当弱めているはずだ。

ルーブルの暴落、ロシア国債の暴落を止める手立てがない。6300億ドル余りのロシア外貨準備のうち、約6割は使えない。最新データ(2021年6月現在)の通貨別内訳で、ユーロ32.3%、ドル16.4%に、ポンドと円を加えれば、合計60.9%となる。使えるのは金21.7%、人民元13.1%と、4割足らず。ルーブルの下落を止める手段に乏しい。

商品相場にも大きな変動が起きている。原油(WTI、期先先物)は、1バーレル=129.44ドルと2008年以来の高値。これで天井に達したとはとても思えない。これまでの最高値147.27ドル(2008年7月)を突破する可能性が高い。有事に強く、インフレ対応で選好される金相場の上昇の勢いも目覚ましい。8日にはスポット価格が1オンス=2,070.41ドルまで上昇、過去最高価格2,074.92ドル(2020年8月)超えは確実といえる状態だ。

今、イスラエル、トルコなど、第3国から仲介の申し出があり、またロシア・ウクライナの2国間交渉も続いているが、交渉が順調に進かどうかは悲観的に思っている。金融市場変調の終盤はまだ程遠いと、気持ちを引き締めている。これまでの相場の方向性が、早急に逆転するとは考えにくい。

一方、ドル円については、リスクオフでの円買いの力と、原油価格上昇による貿易赤字の増勢・長期化の懸念、低金利の長期化による円売りが拮抗して、いわば綱引き状態の為、114~115円台で小動きに推移している。今日は、米金利の上昇を背景にドル買いが強くなってきているが、今後は、10日の米CPI(消費者物価指数)発表や、来週のFOMCを控えて、ドル円は堅調に推移していくと予想している。

さて、今後1週間の相場レンジ予想であるが、ドル円は、ややドル高の114.80~116.80円、一方ユーロは、対ドルで1.0750~1.1050、対円では124.00~127.00円とユーロ安を予想、英ポンドも1.3000~1.3300とポンド安と予想する。

(2022/3/9, 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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