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第481回 ~ユーロとパリティ~

2022年05月18日

先週12日に、ドルは127.51円まで下落、週間予想ではそこまで一気に売られるとは思っていなかったが、結果として筆者の指摘した下値ポイント(127.56円)とほぼ同じ水準まで下落した。これを底にしてその後反騰、しかし今日まで1回も130円台に戻ることなく、129円ばさみで取引されている。調整が続なかったが、注目された米消費者物価が前月より下がったものの、物価上昇には高水準であることに変わりがないとの判断があり、ドル高を下支えした形である。

その上、FRB関係者からは利上げに強気の発言が続いている。昨日は、パウエル議長が「明確に物価が下がっているとの確認が取れるまでは、0.5%の引き上げを続けることが選択肢」との発言があり、またクリーブランド連銀のメスター総裁からは「0.75%も排除しない」との強気発言も報じられている。引き続き米金利動向がドル円を左右する大きな要因であることに変わりがない。

この裏付けとして、米景気の動向は大きい。今月の指標は好調さを示すものが多く、物価低下には結びつかないとの見解である。昨日(5/17)発表の、小売売上高(前月比+0.9%、ただし前2か月の改訂を含めると+1.5%、予想は+1.0%)、鉱工業生産(前月比+1.1%、同改訂含めて+1.0%、予想+0.5%)と、いずれも堅調な数字である。パウエル議長の発言はこれらを見た上と考えられる。今後は住宅関係の発表が続く。注目していきたい。

一方で、金利上昇が続くとリセッションリスクが高まる、と指摘する記事も多くなってきた。ただ、いまのところ2022年中は発生しないとの見方が大半だ。しかし、先を読む為替の特徴として、経済指標の出るたびに相場への織り込みが進んでいくので、筆者は独自の表を使って指標一つ一つを積み上げてアヘッド・オブ・カーブを目指している。

一方、欧州に目を転じると、ユーロは相変わらず下落を続けている。ウクライナ情勢の先行き不透明を嫌気した動きであるが、特に先週から出ていたフィンランドとスウェーデンのNATO正式加盟の早期実現に向けた流れで、一気にユーロは2017年1月以来の1.0349まで急落した。特にフィンランドはロシアの隣国、一考も早くNATOに守ってもらいたいと早期決断であった。これまで中立を保ってきたが、今や背に腹は代えられないということであろうか、NATO加盟の立場に転換した。

政治が経済を左右するとの観点から考えるポリティカルエコノミー的に言うと、新たなユーロリスクの高まりである。加盟が正式決定となれば、フィンランドにロシアが攻め込んできた場合は、NATOは参戦する義務を負うことになる。この点が第3次世界大戦への懸念として、ユーロ売りをもたらしたと考えている。

しかし一方でより短期的な要因として、ドイツ国債の利回り上昇はユーロ買いをもたらす。5/3から10年国債の利回りは1%を超え、5/9には1.1890%まで上昇した。その後1%を割った時期もあったが、今週に入って再び1%台へ上昇、昨日5/17の終値は1.0560%と6日ぶりに1%台で終え、今日18日は1%を割っていない。これは5/9以来で、金利上昇傾向が明確になってきた。その流れの中で、クノット・オランダ中銀総裁が「7月ECB理事会で0.25%の利上げを実施すべき」と発言したことが報じられた。今後もECB関係者の発言を受け、相場は上下していくだろう。

市場金利が上昇傾向を続けていけば、ECBの利上げ決定について相場への織り込みが増していく。ただ、相場見通しの際は、注意しなければならないポイントがある。ECBの決定に際して市場の期待に添わない事態が発生した場合、ユーロは一気に下落する可能性があることである。既にパリティ(1ユーロ=1ドル)が見えてきたからだ。

さて今後1週間、ドル円は調整が終わり、ドル下固めの週と考えて、128.75~130.75円と予想。一方ユーロはフィンランド、スウェーデンのNATO加盟の正式要請を受けてユーロリスク安意識もあるが、ドイツ10年債の1%台が恒常化することで金利先高観が出て、対ドルは1.0450-1.0650とユーロ堅調を予想、対円では135.00円-137.50円と予想する。また英ポンドドルは1.2300-1.2600とポンド高を予想する。

(2022/5/18 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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