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第483回 ~円安は終わっていない~

2022年06月01日

今日はこれまで、129円半ばまで円は売られている。筆者の先週コラムでのドル円予想(126.20~130.20円)にはまだ到達していないが、予想していた通り、ドル高/円安方向に展開してきた。市場では、ドル高はピークかのような声が増えてきた。しかしそれらの変化が根っこから起こっているのなら、「その通り」と言うが、筆者にはそこまで確たるものになっていないと判断している。今後2~3週間は、5月9日に付けた131.35円の高値越えにトライする動きが出てくると予想している。

さて、今日までの一週間を振り返ると「円安基調に変化」「ドル高にピークアウト感広がる」など、流れがドル安方向に変化してきたとの記事を目にするようになった。確かにこれまでドル高をもたらしてきた要因(金利差、成長率、米国への信認、市場心理―これを筆者は見えない手と呼んでいる―)のいずれもが、変調を示してきたとの論調である。

まず金利差、日本では日銀が上限を+0.25%にキャップしているので、もっぱら米国の金利―それも10年国債金利―次第で決まるが、米国経済の足元に後退感が出てきたことが背景になって金利が低下し、金利差が縮小してきた。経済状態を総合的に見て「物価高による景気後退懸念の台頭」との判断となる。確かにそのような材料が多い。個別には、非農業部門雇用者数(NFP)は+428千人、失業率は3.6%と順調に回復しているが、消費者物価指数は総合・コア共に年率では前月より低下、更に、住宅市場でも減退警戒感が高まっている。

中古住宅・新築住宅とも販売件数が前月より急減しており、新築住宅の在庫が、3月の6.9カ月から4月は9カ月となり、一気に30%も増加したことが懸念を高めている。住宅ローン金利の上昇、供給制約、木材などの原材料価格高騰が、大きく影響している。合わせて全米住宅建設業者協会(NAHB)がまとめている個人住宅建設景況感指数が前月の77から69に大きく下げていることも、後退感を増している。

また、GDPの中で約70%のシェアを占める、個人消費が伸びてこない。昨日発表になった、消費者信頼感指数(コンファレンスボード)も106.4に低下(4月107.3)、過去4カ月106前後で停滞と、消費マインドが一向に盛り上がらない。こちらも物価高の影響が大きい。このような経済動向にウクライナ紛争の長期化懸念が加わり、成長率予想も徐々に低下している。ただ、米国のGDPは第1四半期のマイナスはほぼ確実だが、第2四半期はプラス予想(例:アトランタ連銀のGDPナウは+1.9%予想<5/27現在>)、2022年はリセッションの懸念はないとの見方が多く、個人的にも心配していない。

一方で、FRBの利上げ予想(今後2回のFOMCで各0.50%利上げ)が市場に相当織り込まれていることもあり、引き上げ幅が0.5%でなく0.25%となるようなことがあれば、米金利の低下→日米金利差縮小→ドル安、との連想が働く。この点で、今週末の雇用統計が、毎月のことではあるが、大きく注目される。現在の市場予想は、雇用者数(NFP)+32.5万人、失業率が3.5%といずれも低下、インフレ動向に大きく影響を与えていると言われている賃金(平均時給)は、前月比+0.4%(前月+0.3%)、年率で+5.2%(前月+5.5%)となっている。数字は、低下するとの見通しだが、市場は予想との比較において上下するので、大きく異なる場合は、要注意だ。

さて、今月は中央銀行月間である。今日のカナダ中銀から始まり、来週は、豪州、NZがあり、ECBも9日に開催される。今後1週間、ドル円は、128.50~130.50円とドル高を予想。一方ユーロドルは、利上げ機運の高まりから、ユーロ堅調の1.0600-1.0850、対円でも136.50円-139.50円と、ユーロ高と予想する。また英ポンドドルは1.2400-1.2700と、現状水準維持と予想する。

(2022/6/1 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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