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第486回 ~米国投資家を覆うストレス~

2022年06月22日

先週の2大イベント・FOMCと日銀金融政策決定会合は、終わってみれば、日銀の円安容認を生み出しただけであった。FOMCが終わって、材料出尽くし感から16日は約2.30円のドル安/円高となったが、日銀会合後(17日)は逆に約3.20円のドル高/円安に反転、ドル買いの勢いを残して越週した。この結果が、昨日136円をクリアし、新高値136.71円まで伸びた結果を導いた。

この要因はただ一つ、日銀の孤立化である。「黒田総裁は急激な円安は経済に影響があり、好ましくない」と言っているものの、現在の水準についてのコメントは聞かれない。まるで「急激な円安には対応を考えるが、今の135円程度の水準を牽制することはない」と言っているようなものだ。海外投資家には、円売り再開のサインとなった。

また先週は多くの中央銀行が利上げを行い、これまでほとんど見向きもされなかったスイス中銀までもが、なんと15年ぶりとなる利上げ(マイナス0.75%からマイナス0.25%へ)を発表した。ECBが7月利上げを予告しているので、主要国では、日銀が唯一、緩和政策継続を維持しており、円安はますます止まらないことになった。

ここまでくると、24年ぶりのドル高と言う高値恐怖症だ、との声も出るが、政策金利差の拡大は自明の理。相場の原点(需給)を考えれば、この円安進行は自然の流れであろう。その例の一つが、キャリー取引(金利の低い通貨を借りて<売って>、金利の高い通貨<を買って>の運用)である。米国金利上昇が止まるか、日銀が大幅な利上げをするかと言う変動がなければ、「金利要因」としての円安は終わらないことになる。

そこで、それ以外のドル安となる要因を考えると、真っ先に脳裏に浮かぶのは、アメリカを買う力が弱まることである。言葉を換えて言えば、アメリカ企業の成長が続くかどうかである。そのためのキーワードは「リセッション(2四半期続けてマイナス成長)」である。最近メディアでこの言葉が頻繁に使われ始めた。筆者が集めたコンセンサスは、「2023年に直面する」だが、徐々に「2022年後半にリセッションに陥る」との見方が増えてきていることも気になる。

そこで、著名な投資家である米国の友人に現況を尋ねてみた。「現在と2023年のアメリカの経済状態を一つの言葉でいえば、それは何か」と言う質問に対し、答えは「今年はStress(ストレス)、2023年はPossibility(可能性あり)」であった。ストレスの原因はFRBの政策への不満であった。「FRBは間違えている。このままのペースで利上げを続けるとアメリカ経済は大変なことになる」という主張であった。

ところで、昨日発表になった米国中古住宅販売数(5月)は4カ月連続して減少、年率541万戸であった。この数字は、ピークであった昨年5月より25.2%少なく、今年だけでもピークの1月(年率649万戸)に比べ16.6%下回るという、2020年以来の少ない数字である。主要な要因は住宅ローン金利の上昇、例えば30年金利は昨年12月から2%も上昇、現在は6%を超え、2008年以来の高水準となっていることだ。個人住宅需要は、GDPにおけるシェアも大きく、行き過ぎた利上げ幅・スピードはリセッションをもたらす原因にもなることを懸念する声が高まっている。

今後は、米国経済動向により大きな注意を払わなければならないと、雇用統計のみならず、特に個人関連指標(住宅関連指標、消費者信頼感指数、個人消費、売り上げ指数)に、より重視していきたい。ちなみに、今日、明日とパウエルFRB議長の議会証言がある。最近大きくなってきたFedバッシングを意識した発言になるか、これまでのペースを維持する発言になるか、大いに注目していきたい。

さて、今後1週間の予想レンジは、ドル円が134.00~137.25円とドル高を予想する。一方ユーロドルは1.0400~1.0700、対円は141.00円~144.00円と先週と同じ地合いと予想する。また英ポンドドルは1.2000-1.2400とポンド堅調と予想する。

(2022/6/22 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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