7月13日の「為替大観」は、筆者都合により休載いたします。次回の更新は7月20日の予定です。
2022年前半、為替相場は歴史的な動きとなった。年初には、ほとんどの参加者がそこまで円安になるとは見通せなかったと思われるが、ドル円は137円ちょうど(6/29)と、24年ぶりの円安水準となった。そしていよいよ後半戦が始まった。さて、どう読むか!
まずドル円。今は135円台へ下落し調整気味であるが、筆者は、円安がピークに近いものの、本格的な円高への転換前に、もう1-2度、137円台へのトライがあると予想している。いわゆる「2度あることは3度ある」の一例である。しかし3度目の正直、とはならず(安定的に137円以上で取引できず)、ドルは売られはじめ、その後は年末の120円台に向けて下落していくとの予想である。
カギは米国経済と米国中間選挙(11/8)だ。雇用、物価、消費が3大項目で、その原点となる、イ)エネルギー、食糧価格が、落ち着くかピークを迎え下落していくか、またロ)供給制約問題が解決されるか、ハ)そのためには人材確保が改善されるかが、大きなポイントとなる。合わせて、ニ)新型コロナの感染が世界的に拡大傾向にあることや、ホ)ウクライナ情勢の緊迫化も相場展望に織り込んでいかなければならない。個人的には、全体的に改善方向に進んでいくと予想している。すなわちFRBの利上げ見通しも、6月のドットチャートを下回ると予想する。と、思いを巡らせていると。。。。ユーロ相場に異変が起こった。
ユーロ、ポンドが急落、個人的には、正直言って不意打ちを食らった感じであった。昨日7月5日欧州市場が始まってすぐのタイミングで、ユーロは1.0440 近辺から急落、1.0235の安値を付けたあと、1.0257でNY市場を終えた。1日で200ポイント以上の急落となり、2002年12月以来の安値を付けた。欧州通貨の一員、英ポンドも下落。長いこと見ることのなかった1.20割れが、2度あることは3度あるとの流れで3度目を迎え、そして3度目の正直で、1.20割れが発生、一気に1.19も割れて、1.1898の安値を付け、2020年3月以来のポンド安となった。
要因としてはインフレの高進や、ウクライナ情勢の混迷、そして解決までの長期化懸念、エネルギー事情の悪化など、複合的な要素を背景に、今後景気悪化が更に厳しくなるとの懸念が急速に高まったことが大きい。欧州について言えば、世界的な金利上昇をまともに受けている、ギリシャ、イタリア等南欧諸国の財政危機問題が相場に重石を与えている。これらの国の国債下落(利回り上昇)により、ギリシャ危機を思い出させ、ユーロ売りが顕在化した。先日ECBが金利上昇への対応として緊急臨時会合を招集したことも、問題の深刻さを浮き彫りしたものと考えている。英国は閣僚2人の辞任による政局不安もポンド売り材料となった。
合わせて、ECBの利上げがスタグフレーション(インフレ下の景気後退)の到来を早めるとの危機感も出ている。最近1.9260%まで上昇した(6/16)ドイツ10年国債利回りが、先週末は1.1870 %に低下したことで、米国との金利差がますます拡大していることも、ユーロにとって売り材料になる。ユーロはパリティ(1ユーロ=1ドル)が完全に視野に入ってきた。
これらの結果ドルインデックスが急上昇、106.792と2002年1月以来の高値水準となった。円に対してはドル安であり、典型的なドル高(小幅円高)のリスクオフ相場となっている 。このドル高が続いていくと、いよいよ米国政府からのドル高牽制が現実味を帯びてくると筆者は強く考えている。
その一つが、先週当コラムで取り上げたアジア諸国の苦難と米政府の援助政策との関係である。今、アメリカはインド太平洋を主戦場として、中国と囲い込み争いをおこなっていることは先週述べた。ここに、今後の円相場を読むヒントがあると考えた。国際金融市場の現象として、米ドル金利の頭打ち(あるいは低下)、外には見えないアジア諸国通貨での米ドル売り介入が起こることが十分想定されると、相場動向に目を凝らしている。
さて、今後2週間、米国の重要経済指標が間断なく発表になる。中でも雇用統計(7/8)、米消費者物価(7/13)は、FRBの政策決定に影響を与える重要な指標である。7月は6月に続き、政策決定会合があり、相場は乱高下が予想される。主要通貨は今後2週間、ドル円は134.00~137.10円、またユーロドルは1.0100~1.0500、対円は135.50円~139.50円、英ポンドドルは1.1800-1.2200と予想する。
(2022/7/6 小池正一郎)