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第490回 ~140円の分かれ道~

2022年07月27日

日米欧の金融政策決定会合は、今月から後半戦に入る。既に欧州中央銀行(ECB)と日銀(BOJ)は先週終わり、米連邦準備制度理事会(FRB)の決定会合(連邦公開市場委員会、FOMC)の結果が、今日発表になる。これまでも世界の金融界を牽引しているこの3行の動向は、毎回市場を揺るがしているが、今回はこれまでと趣が異なってきている。

まずFOMCの予想であるが、利上げ幅のコンセンサスは0.75%。パウエル議長はじめ、FRB理事、地区連銀総裁の発言からは、「まずインフレ退治を優先する。インフレ率との差を縮小することが責務であり、景気後退を恐れることなく利上げを続行する」との覚悟が感じられ、先月に続き同じ幅の利上げは間違いないであろう。

これまでCPI発表時は1.00%の大幅な利上げ見通しも出た一方、住宅やPMI(景況感指数)などの経済指標悪化から、今回は0.50%に縮小する可能性もある、と予想は振れたが、シカゴ先物市場で計算されたFEDウォッチの確率が一番高く、これまでのFRBの姿勢からも、0.75%が順当なところだと考えている。

とすれば米ドル金利は足元では上昇するが、しかし注目はイールドカーブの形状である。既に、6か月物から10年債利回りより高い逆イールドになっており、この金利差がさらに拡大するようであれば、ドルの下落も考えておかなければならない。為替市場は、足元でなく、将来の見通しにより強く反応する傾向があるからだ。

わかりきったことより、将来の要因を売り買いする。米国の景気後退が強まれば、FRBは利上げを縮小せざるを得ない、米国の金利は頭打ちになる。一方で、日本はこれから物価が上昇し、日銀も利上げせざるを得なくなる、とすれば日米金利差は縮小する。140円は夢のまた夢かも知れない。今のうちにドルを売っておこう、といった心理が強くなる可能性がある、となる。頭に入れておきたい。

ところで、趣が異なってきた点だが、市場心理に変化が出てきたとの意味である。分かりやすく登山に喩えれば、これまで頂上は何処かと探しながら登っていたが、これからは頂上が見えたので、下り坂に向かっているとの心理になったことである。但しその下りはだらだらな道なのか、急激に下がるのか、分からない。そこを判断するのが、「ファンダメンタルズ(基礎的経済条件)要因、すなわち景気後退の深度」である。

具体的に言えば、相場の変動要因=これはあくまでも二国間の金利差と考えている=が、「足元の変更より、将来の見通しの読み」に変わった、と言うことである。その大きな例がBOJの決定後に起こった相場展開であった。今回もきれいに前回同様の現状維持決定であった。欧米が利上げすることがほぼ確実であったことを考えると、金利差が拡大することは容易に判断できた。しかしドル円は、全く逆の展開となった。当日21日には、137円まで1.50円以上売られた。そして翌22日には135.56円までドルは売られ、7月8日以来の円高水準となった。

一方ECBについては、確かに発表直後は、90ポイント近く上昇(1.0190→1.0277)したが、次の1時間では、1.015台まで売られ、急激な往って来い相場となった。ECBの利上げ幅が0.50%と、予想の上限であったことや、次回も利上げを行うことが示唆されたことから、これまでであればユーロ相場は上昇を続けることが容易に推定できた(筆者もそう思っていた)。しかしその後のユーロは軟調に推移し、今週に入って再び1.01台に売られている。

これら現象の背景は、今は「足元の二国間の金利差」でなく、「景気後退の可能性格差」が優先されてきたと理由づけていいだろう。一つの材料は、22日発表の各国景況感(購買担当者指数、PMI)である。世界的な景気後退感が懸念されている中で、注目度が一段と高まった指標である、米国は47.5と大きく低下、2020年5月以来の50割れとなった。金利上昇により世界的な景気後退が予想され、特に米国のリセッション入りの警戒感が高まってきた。明日の米第2四半期GDP(アトランタ連銀のGDPナウではマイナス1.6%の予想)の発表も控えており、今回のFOMCでどのような判断が為されるか注目したい。

さて、今後1週間、ドル円は135.50~138.00円、またユーロドルは1.0020~1.0250、対円は137.00円~140.00円、英ポンドドルは1.1850-1.2150と予想する。

(2022/7/27、 小池正一郎)

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プロフィール

  • 著者近影 小池 正一郎(こいけしょういちろう)
    グローバルマーケット・アドバイザー。1969年日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)入行後、資本市場部長、長銀証券常務などを歴任。1998年よりUBS銀行外国為替本部在日代表、シティバンク・プライベートバンクを経て、2006年より2015年6月までプリンシパリス.日本代表(国際金融政治情報コンサルティング会社、本部英国ロンドン)。外国為替コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー(CFP(r)認定者)。ブログ執筆中(牛誰人のブログ・小池正一郎の世界経済大観)。新潟県出身(関川村ふるさと大使)。


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