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市場養生訓

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第749回

2018年12月11日

 為替レートはいろいろな為替の売買の結果だ。いろいろな売買には実需と投機がある。為替取引の9割以上は投機為替だ。それだけ為替レートへの影響も大きい。投機には直物と先物がある。直物の方が多い。以上が為替の全体的な構造だ。

 従ってそれぞれの為替の需給を推測できれば、たとえそれが大まかであっても為替の方向性を見通すことができた。具体的には、実需為替を生み出す輸出入の動向や証券投資などの統計やそれ等を担う主だった企業の担当者からの情報、そして内外の主だった投機為替の担い手、ヘッジファンドや大手金融機関のディーラー達との意見交換などだ。

 ただこうした方法は二つの潮流の変化から精度を欠くようになった。一つは投機為替の担い手の広がりだ。大手投資銀行やヘッジファンドだけでなく、CTA、アセットマネージャー、年金基金など多数に広がった。投機為替の需給を推測することは難しくなった。シカゴの先物市場のポジション動向を示す統計があるが、参考にはなっても、投機為替のグローバルな需給を把握するには不十分だ。

 もう一つは通貨オプション市場の拡大だ。通貨オプションはそのリスクをヘッジするために為替の売買をする。通貨オプションから発生する為替の需給の把握はほとんど不可能だ。為替レートの変動によりヘッジの割合が変わる。

 ところで現在のポンドほど見通しが難しい為替レートはないだろう。通貨オプションのポジションが大量に入り混じっている。そもそもオプション取引が増えること自体見通しの難しさの反映でもある。同時に大きな変動期待の表れでもある。

 高いプレミアムを払っても大きな変動があればペイするからだ。現在のインプライドボラティリティ(変動率、プレミアム計算の主要要因)は通常の倍以上なので、プレミアム(オプションの手数料)も高い。

 ポンドの大変動と言えば92年のポンド危機、近年ではBREXITの国民投票の局面を思い出すが、いずれもジョージ・ソロスはポンドの暴落を公言した。だが今回は静かだ。政治状況が流動的で、合意なしの離脱から再度の国民投票まで、その間のいくつもの部分的合意まで誰も予測できない。それにより為替レートへの影響は大きく変わる。

 それに米国金利の変化などドルサイドの要因も大きくなってきた。ポンド相場は煮詰まってきた。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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