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市場養生訓

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第839回

2020年12月01日

 先進国の中央銀行が一段と量的緩和政策を強化する。スウェーデンの中銀リクスバンクは先週、債券の買い入れ額の増加と買い入れ期間の延長を決めた。5千億クローネから7千億クローネへの増額と、来年末まで6か月間の延長だ。
 ECBは、今月10日の理事会で、債券購入額の増額と、金融機関への超低利の貸し出しの増額を決める可能性が高い。前回の理事会の議事録や理事たちの発言から推測される。市場ではユーロ圏各国の国債のイールドは低下し(価格は上昇)、ポルトガル国債は初めてマイナス金利になった。
 さらにFEDも一段の資産購入額の増加が見込まれる。
 こうした大幅な量的金融緩和の拡大の為替レートへの影響はどうだろう。すぐに思い出すのは世界金融危機、リーマンショック後の先進国による一連の量的緩和政策の強化だ。
 特に米国のFEDによる量的緩和政策第二弾は影響が大きかった。ブラジルの財務大臣は米国が通貨切り下げ競争を主導していると非難したほどだ。新興国通貨はドルをはじめとする先進国通貨に対して上昇し、それが輸出競争力を阻害し景気を悪化させた。市場介入、資本流入規制など通貨高を抑制するための措置を講じたが、先進国の量的緩和政策の拡大の威力には効果がなかった。
 同様な金融政策をとる先進国の中でも通貨の面ではFEDの威力が圧倒し、ドル安が円やユーロに対しても広がった。ドル基軸体制の中、FEDの影響力が最も強いことをあらためて認識させられた。
 こうしたドル安トレンドに変化が出たのはFEDの量的緩和政策の修正の兆しが出てからだ。
 こうした文脈の中で注目されるのは日銀になる。金融緩和政策の量や質の点で相当程度進めてきた日銀が一層の緩和性政策の効果を期待するのは難しい。だがFEDなど先進国中銀が緩和政策を強化する中で実行しないとドル安円高が進む可能性が高くなる。
 現在はリスクオン・オフのトレードの影響が強く、リスクオンでは安全通貨の円が売られる傾向がある。それがドル安円高にブレーキをかける役目を果たしている。二つの要因の綱引きになっているが、基本的には金利要因の方がリスクオン・オフ要因よりも為替変動に与える影響は強い。
 その点では日銀は効果の不確かな緩和政策の強化に踏み切るか、円高を許容するかの選択を迫られる。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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