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市場養生訓

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第634回

2016年08月16日

 現在の市場では米国の利上げの延期とその他先進諸国の金融緩和政策の拡大の枠組みの中で変動が規定されている。その枠組みを前提にした株高であり、新興国通貨高であり、キャリートレードの復活である。

 日銀は9月にその枠組みを検証するとしているが、その枠組みの中でマイナス金利は象徴的な政策であると同時に議論の多い政策でもある。G7の中では4か国でマイナス金利が適用されている。

 今月金融緩和政策を打ち出したBOEの総裁はマイナス金利を嫌っているし、日本が導入したときは通貨安競争を煽ると批判した。

 マイナス金利は特に金融機関の収益に悪影響を及ぼす点と銀行顧客への預金金利への適用に対する懸念が指摘されることが多い。

 ドイツでは小規模の金融機関が個人の預金の一定額以上にマイナス金利を課す例があるし(一つの銀行は50万ユーロ以上、もう一つは10万ユーロ以上)、スイスなど他のマイナス金利導入国でも企業や個人の大口預金にはマイナス金利を課す例もある。

 だが大半の金融機関では預金にマイナス金利は適用していない。特に個人預金へのマイナス金利の適用は社会、政治問題になりやすいからだ。それに中央銀行もマイナス金利政策から生じる金融機関の負担を軽減するため金融機関への貸し出し条件などで配慮している。

 ただ金融機関側に貸し出しなどの資金需要がなければ中央銀行による好条件の資金提供も役に立たない。そのためドイツの金融機関のようにECBが適用する0.4%のマイナス金利をそのまま顧客に課す例も出てくる。

 日本では日銀当座預金へのマイナス金利は0.1%であり、個人の顧客にまでマイナス金利の適用を検討している金融機関は今のところない。日本の金融機関の収益減をマイナス金利のせいにする議論は多い。確かにイールドカーブのフラット化でショートファンディング(長期の資産を短期で資金調達)による収益の減少は避けられない。その点では簡単に儲けられなくなったことは確かだ。しかしそれは普通の競争条件に戻っただけだ。特に大手の金融機関の場合は多様な金融商品にアクセスできるし、商品を生み出すこともできる。収益機会の多様化を図ることも可能だ。

 日銀がマイナス金利批判に怯え、それを撤回するような事態になれば、市場の枠組みが崩れることになる。そうなれば大幅な円高は避けられないだろう。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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