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市場養生訓

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第643回

2016年10月25日

 中国共産党の6中全会が昨日始まった。政策や人事の議論を詰めて来年の党大会に繋げる重要会議だが、一方で今日も人民元は金融危機以来の安値を更新している。

 規制の少ない人民元のオフショアレート(CNH)は今朝、対ドルで6.7885の6年ぶりの最安値を付けた。国内のレート(CNY)も6.7744の中値は6年ぶりの安値になり、その後6.7794を付けた。

 中国人民銀行はCNYを需給が一層反映されたCNHの動きを反映させることを明言しているので、両レートのかい離が大きくならないように運営している。

 昨年から今年の初めにかけて人民元の下落は中国経済に対する不安を招き、世界の金融市場に大きな負の影響を与えただけに、今回の人民元の下落に神経質になる人が増えても不思議ではない。

 人民元の水準は昨年よりも低く、主に国営企業の借入額の増加などにより信用の膨張はGDP比で最高水準にあるなどファンダメンタルズの一部は一層悪化している。

 しかし市場では現在の人民元の進行を差し迫った大きなリスクと捉えていない。それは資本流出額の規模からも伺える。

 9月末の中国の外貨準備額は3兆1700億ドルで5年ぶりの低水準になった。前月より188億ドル減少した。外貨準備の減少は主にドル売り人民元買いの市場介入によるが、運用益もあるので実際は300億ドルほどの介入をしたと推計される。

 一方、昨年から今年にかけては1千億ドル近くの外貨準備の減少した時期があるなど、資本流出が本格した状況であった。例えば中国企業のドル債務の返済や人民元建てへの借り換えだ。当然介入額は膨らんだ。人民元の急落を防ぐための介入だ。

 だが今回は資本流出による人民元の急落を防ぐというより、昨年決定され今年の10月1日から実施の人民元のSDR(IMFの特別引き出し権)の構成通貨入りを前に、安定した人民元のイメージを維持するため市場介入だった。政治的介入だ。つまり規模も介入の意図も異なる。

 人民元がSDRの構成通貨になった以上、中国人民銀行も他の中央銀行と同様通貨安を好むので徐々に進む人民元安を止めるような介入は控える。それが現在の状況だ。

 もっとも膨張する信用が倒産の連鎖を引き起こし、金融システムの破たんにつながるような事態になれば資本流出は急増し、人民元の急落を防ぐために当局は巨額の介入を余儀なくされる。

 今はその懸念はないが、人民元のレートや外貨準備の変動はチェックするに越したことはない。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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