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市場養生訓

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第606回

2016年01月26日

 国際会議では日本は目立たず、存在感が薄いといわれてきた。だがスイスのダボスで開かれる1月恒例の世界経済フォーラムは例外のようだ。


 一昨年のダボス会議では安倍首相が、日本と中国の関係を第一次世界大戦前のイギリスとドイツの関係になぞらえて言ったことが大きな話題になり、日本株売りの契機にもなった。今年は甘利大臣が金銭スキャンダルを質問された程度で、存在感のない日本に戻ったかと思ったが、黒田日銀総裁の発言が注目された。


 日銀の金融緩和の話ではなく、中国についての発言だ。


 中国は資本取引規制をするべきとの意見だ。西側諸国は、中国の市場の自由化や規制の撤廃を支持してきただけに、G7のメンバーから逆行するような意見が出たことに驚いた様子だ。


 特にこうした自由化の流れを評価して人民元がSDR(IMFの特別引き出し権)の構成通貨になったばかりだ。資本規制が行われるような通貨がSDRの3番目のシェアを持つ構成通貨になることは本来ありえないことだ。黒田総裁が正しければ、人民元のSDR入りは時期尚早というか間違いだったことになる。


 では黒田総裁は正しいのだろうか。


 確かに資本取引の自由化を進めれば為替レートの安定は保てなくなる。資本流出が進む状況で為替レートの安定を保とうとすれば外貨準備は減少する。昨年12月に1千億ドル以上減少、年間で7千億ドルの減少は大きい。このペースで流出が続けば金融市場の不安が増し、それがさらなる資本流出を加速するという危惧を抱く人がいても不思議ではない。


 だからとりあえず資本規制を実施してこの流れを止めることを一義的に考えることもありうる。アジア通貨危機の時などにアジア諸国が実施した。


 だがその後はどうするのか。取りあえず問題は解決しても、人民元の信用は傷つく。これまで資本規制を導入してきた国とは世界経済への影響力が大きく異なる。中長期的には世界はもっと大きなリスクを抱え込むことになる。


 処方箋は、資本取引の自由化は漸進的に進める現在の方針は堅持しつつ、秩序だった人民元安を許容することだ。大きく変動するときのみ市場介入すればいい。減少したとはいえまだ日本の約3倍の3兆ドル以上の外貨準備はある。


 このさじ加減は容易ではなく、時には市場の大きな変動も避けられない。資本取引規制のほうが当面の問題の解決には役立つだろうが、あとは中国当局の覚悟次第だ。


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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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