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市場養生訓

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第607回

2016年02月02日

 日銀のマイナス金利はサプライズだった。ダボス会議で黒田日銀総裁は中国に資本規制の導入を提案したくらいだから、もしやとは思ったが、市場には効果的だった。ダボス会議の雰囲気も日銀の行動を促した要因の一つだろう。


 今回のマイナス金利は日銀の当座預金への付利を+0.1,0、-0.1%の三層にするということだが、ポイントは、必要に応じてマイナス金利を更に拡大するという点だ。


 新たなマイナス金利の導入を資金需要が乏しいから効果は期待できないとの指摘があるが、これはポイントがずれている。確かにこれにより資金需要が増え、貸し出しが増加するかは確かではない。


 だがマイナス金利が続き、さらに拡大していくと銀行間の資金取引をはじめとしてマイナス金利をベースにした取引が増えていく。金利差を利用した裁定取引も増加する。これらは当然、為替や資産価格に影響を及ぼす。


 それは銀行が顧客取引にまでマイナス金利を転嫁する状況になるまで続く。銀行がマイナス金利のコスト負担を顧客に転嫁するのはそれまでと異なる社会的な判断が必要になる。


 マイナス金利を1年ほど前に導入したスイスは、マイナス幅を拡大して中央銀行の預金金利は現在マイナス0.75%になっている。顧客へのマイナス金利の適用には至っていないが、特に中小の金融機関はマイナス金利の資金コストの影響が比較的大きく、顧客預金への転嫁の可能性を指摘する金融機関も出てきた。


 特に3月にECBがマイナス金利幅を広げるような政策を打ち出すと、スイスもさらに拡大の可能性が出てくるからだ。


 いずれにせよマイナス金利の導入により今後も日銀は政策対応手段を得たことになる。


 ところでこうなると銀行の資金収益は減る一途になるように見えるが、そうではない。マイナス金利が拡大する過程で増える裁定取引は銀行などの金融機関が主体で行われるからだ。特に格付けの高い金融機関は資金調達コストも低く有利になる。専門的なディーラーもいる。


 非金融機関の顧客は銀行からスプレッドを課せられるので裁定取引の機会は少ないだろうし、人材も乏しい。その点では恩恵は専ら大手の金融機関になる。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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