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市場養生訓

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第612回

2016年03月08日

 このところの市場での顕著な動きの一つに、新興国通貨の上昇(対ドルでの戻し)がある。ブラジルレアル、ロシアルーブル、トルコリラ、南アランド、など多くの新興国が対ドルで最安値や最安値に近い水準から大きく戻している。


 これはこのところ堅調な値動きを見せている原油の輸出国の通貨に限られたことではない。新興国通貨全般の動きだ。


 昨年から新興国通貨が大きく下落した要因としては原油価格下落、中国経済の減速、ドルの上昇、国内政治の混乱などがあげられるが、直接の契機は新興国からの資本流出だ。主に米国の金融政策の転換によるものだ。昨年半ばあたりから新興国の外貨準備が大幅に減少していることにも表れている。


 したがって最近の新興国通貨の戻しが顕著なのは、資本流出が止まったか流出のペースがだいぶ緩やかになったと考えられる。その背景には米国の利上げのペースが当初よりも後退したことが確かになったとの見方がある。


 昨日発表された中国の2月の外貨準備高の減少が286億ドルと市場の予想を大きく下回ったこともこうした文脈で読むことができる。


 もっとも中国の資本の移動は他の多くの新興国ほど米国金利に対する感応度は高くない。それは一つには資本移動が制限されていること、もう一つは国内の政治経済の事情が強く影響するからだ。


 それでも中国の資本取引の自由化が徐々に進むにつれて米国の金融政策の影響度が増してきていることは確かだ。


 中国からの資本流出は昨年後半から増加し、12月は1千億ドル以上、1月も1千億ドルに迫る規模で外貨準備高が減少した。資本流出の取引はドル買い人民元売りになり、人民元下落圧力が増す。その圧力を緩和するためには人民銀行がドル売り人民元買いの市場加入をする。そのドルは外貨準備を取り崩して調達する。


 今後だが、2月は旧正月で市場が1週間休みだったこともあり、この傾向が今後も続くとはかぎらないが、少なくとも月1千億ドル規模の外貨準備の減少はないだろう。


 新興国それぞれの国内事情を見るとアルゼンチンなど良好な環境に転じた国がある一方で、ブラジル、ロシア、トルコなど依然として状況が悪化する可能性のある国も少なくない。だが米国の金融政策のスタンスが変わらない限り、新興国通貨安(対ドル)のピークは過ぎたと考えられる。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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