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市場養生訓

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第614回

2016年03月22日

 昨年は年初からスイスフランがわずかの間に40%も変動するという為替の歴史で類を見ない「事件」に遭遇したが、今年はマイナス金利という天地が逆さまになるような政策を日銀が導入して市場にショックを与えた。


  だがマイナス金利政策も日本では初めてだが、スウェーデンでは7年ほど前に導入している。この時は1年ほどで終わり、後に再導入するのだが、デンマークでは4年前、ユーロ圏では1年半ほど前、スイスでは1年前と、既に実験中の政策なのだ。


  もちろん経済規模や経済システムなどの違いで、それらの実験データがそのまま日本にも当てはまるわけではないが、それなりの参考にはなるはずだ。


  預金金利や住宅価格などの面で多くの共通点が見られるが、為替に関して言えば、マイナス金利政策が自国通貨高の抑制を目指したこともその一つだ。その点を明確に言っている中央銀行が多いが、そうでないケースでも示唆はしている。


  この点は通貨安競争との批判を浴びやすいので主要国の場合は正面切って言いにくい。だが狙いは明らかだ。BOEの総裁が日銀のマイナス金利導入直後こうした観点から批判したことにもよく表れている。


  ただ通貨高抑制あるいは通貨安志向の狙いは一緒だが、結果は必ずしも同じではない。


  一番の成功例はデンマークだ。クローネの為替レートはユーロと一定の範囲で変動するシステムだが、このシステムを維持していることがその証明だ。


  スイスはユーロスイスの下限(スイスフランの上限)を1.20で設定したシステムを撤廃した直後にマイナス金利を実施した。直後は大変動を繰り返したが、マイナス金利の拡大を進める中で最近はユーロスイス1.05から1.10の範囲で概ね安定している。その点では成功していると言っていい。


  ユーロ圏もマイナス金利導入後と現在のユーロドルの水準を比べれば大幅なユーロ安になっている。ただECBはマイナス幅を0.1%ずつ拡大してきたが、直近の2回は効果が薄い。その点では概ね成功というところだろう。


  為替の変動は金利だけが要因ではないので、これまでの実験が通貨安になったからと言って、今後の政策も通貨安に繋がるとは限らない。特にユーロ圏や日本のように通貨の市場規模が大きい場合は、流動性が豊富だから買われるなど他の変動要因の影響も受ける。


  それでも日銀総裁が最近の円高傾向に対して、そのうち円高が修正されると言うのは政策当局者としては当然の見方だ。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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