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市場養生訓

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第615回

2016年03月29日

 ニューヨークのマンハッタンにあるプラザホテルが売りに出されていると報じられた。セントラルパークの近くの高級ホテルだが、85年のプラザ合意で世界的に有名になり、宿泊や会議で市場関係者も度々使うようになった。プラザホテルに泊まることが目的で出張の口実を作ったディーラーもいた。


 それほどプラザ合意は衝撃だった。市場介入もこれまでで最も効果的だったと言える。市場関係者がその時想像したよりもはるかに少ない金額で、ドル高是正は十分すぎるほど効果を上げた。複数国が合意した協調介入だった。もちろん米国も含まれていた。


 為替の市場介入はその後度々おこなわれたが、協調介入でも成果が乏しいケースもある。政策協調の度合いで介入は協調介入、委託介入、単独介入に分かれるが、単独介入といえども介入する通貨の相手国を無視していいわけではない。日本の場合はドル円が主なので米国になる。それなりの了解は必要になる。


 だが米国は近年、為替の市場介入には基本的にネガティブだ。通貨操作で公正な取引条件を損ねるとして特に議会での批判が強い。そのためか主要先進国では介入の頻度は大きく減った。


 しかし金融危機後に主要先進国が量的緩和政策に乗り出したとき、特に米国がQE2(量的緩和政策第二弾)を始めたとき、通貨安競争が公的な場で批判された。ブラジルの財務大臣は通貨戦争という言葉を使って先進国を批判した。


 こうした批判が今度は日本のマイナス金利の導入によって起きた。BOE(英国中銀)総裁のカーニーは通貨安が目的のマイナス金利政策はゼロサムゲームに繋がり生産的でないと指摘した。


 マイナス金利政策に対する批判が強まる中で、ECBのドラギ総裁はマイナス金利の拡大を否定するような発言をした。


 マイナス金利政策は金利の機能(景気調整機能と資金配分機能)を取り戻し、働かせるものだ。マイナス金利に踏み出した以上、その成果を追及するのが中央銀行の使命で、マイナス金利の拡大を否定するような発言は、マイナス金利政策を自ら弱めているわけで自己矛盾になる。


 金融政策が通貨安に結びつくことによる批判を恐れていては、通貨高によるしっぺ返しを受けるだけだ。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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