世界は第三次通貨戦争に巻き込まれているのかもしれない。日本がマイナス金利を導入したとき、BOE(英国中銀)の総裁は通貨安競争につながると批判したが、その後為替レートは日銀やBOEの見込みに反して円高に推移したことから、批判はしぼんでいった。
近年、通貨戦争という刺激的な言葉を使って先進国の金融緩和政策を公的に批判したのは当時のブラジルの財務大臣だった。金融危機後、米国がQE2の実行に向けて準備を整えているころだ。米国の量的緩和政策(QE)はドル安をもたらし、特に新興国には大量の資本が流入した。通貨は急騰し、バブルの形成などで経済が不安定化したことから、ブラジルの財務大臣が先進諸国、とりわけ米国に対して強い批判をした。
この時期を第一次世界通貨戦争とするなら、次の世界通貨戦争は、新興国や日本などの先進諸国の反撃だ。米国のQE終了に向けた準備期間と重なる。新興国の場合、通貨安が行きすぎ、外貨債務の膨張や外貨準備の急減などの弊害も出たが、日本では円安がアベノミクスの初期の成功を支えるポイントになった。
そして現在、日本、ユーロ圏など世界のGDPの4分の一を占める国・地域でマイナス金利という新兵器を加えた戦いが進行中だ。相手は米国だ。
米国の利上げの延期は実質的には緩和政策の強化と同じだ。第三次世界通貨戦争は先進国が主戦場だ。米国サイド(英国も同盟国だ)は相手の新兵器のマイナス金利を標的に攻撃を強めるに違いない。米国サイドには世界的な資産運用業者や銀行もついている。マイナス金利は所得の再分配効果があり、資産家、富裕者も米国サイドについている。ユーロ圏で最も豊かなドイツもだ。
日本やユーロ圏サイドの戦況は厳しいが、マイナス金利を目いっぱい使って戦い抜くしかない。ひるまず戦い続ければ、思わぬ援軍があらわれ勝算もでてくる。なにせ日本は神の国だ。