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市場養生訓

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第621回

2016年05月17日

 為替市場、資金市場、会計、法律、そして税。当時の米銀本店のディーリングルームには直物、先物ディーラー、顧客担当ディーラー、数百人が同じ空間で叫びあっていたが、それに併設されたスペースに70-80人ほどが一人ひとりデスクを持ち、静かな雰囲気で仕事をしていた。コーポレートアドバイザリーと呼ばれていたが、企業相手に財務上の様々な助言を与え、取引に結びつける仕事だ。そこでの仕事に必要な知識が冒頭の5つの分野だ。


 そしてその中でもキーになるのが税と言われた。そこでの成績、つまり取引に結びつく可能性と利益の額は税金に関する助言によるというのだ。いかに税金を少なくするかのスキームを国際的に考えるスキルだ。30年以上前のことだから現在はどうなっているか知らないが、パナマ文書が明るみになって思い出した。


 いずれにせよ金融機関が税金に深くかかわってきたことは事実だ。金融機関なくては国際的な節税の仕組みも成り立たない。


 そもそも銀行の資金ソースとして最も一般的なユーロ市場も、米国内の規制を嫌って欧州に流出したドル資金が始まりだ。ドル資金が増えるとともに市場は拡大した。欧州の市場がユーロ市場としてオフショア市場の代名詞となったわけだが、今では世界中にユーロ市場が、つまりオフショア市場が拡散した。金融機関はもちろん、企業も、個人も幅広く利用するようになった。


 オフショア市場そのものは合法的だが、マネーロンダリング目的の資金などが流入しやすい。そこで世界は監視の目を強めるのだが、スイスの金融機関が米国当局から脱税資金のほう助などで多額の罰金を取られた事例もあり、最近では欧州のオフショア市場は自制的になってきた。


 そうなると欧州に逃げていた資金がどこかに移る。その一つが米国だ。米国のデラウェア州やサウスダコタ州などは税率が低かったり、無税だったりするのでオフショア市場として資金が集まっている。


 米国が規制を強化しない限り、今後も欧州から米国への資金流入が続くと見られる。こうなるとドルの需要が増えドル高につながりそうだが、欧州にある資金の多くはドル建てだから、為替へのインパクトはそれほど大きくはないだろう。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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