この2週間ほど金価格(ドル建て)が下げ続けている。80ドル近く下げ、1オンス1200ドルをかろうじてキープしている。
金は一般的にドルと逆相関関係にある。つまりドル安の時に買われる。インフレヘッジでも買われる。通貨不信の時も買われる。
金価格が年初の1070ドル近辺から、5月の初めに1300ドルに上昇した主因は、米国の利上げ見送りによるドル安見通しが主因であり、ここ2週間ほどの下げは、6月か7月の利上げ見通しが浮上したことが要因だ。
フェドファンドの先物レートからの判断では、6月の利上げの可能性は28%、7月は60%を上回った。
昨年12月の利上げ以来、FOMCのメンバーの意見と市場の見通しには、ずれがあったが、それが幾分修正されてきた。
とは言っても雇用統計の数字次第では利上げ可能性の数字も簡単に変わるので、利上げについては流動的に見ていた方がいい。
金とドルの関係は以上の通りだが、もっと俯瞰的に見ればマイナス金利時代には金をポートフォリオの一部に組み込むのは悪くない。
超低金利からマイナス金利の時代では高いイールドを望むのは難しい。それなりの運用益を望むとしたらリスクを拡大しなければならないし、安全を重視するなら運用益の減少を受け入れなくてはならない。
運用する者はどちらかを迫られる。どちらがどの程度いるかどうかわからないが、7月のフェドファンドの利上げの可能性の数字と似て、60%程度がリスクを拡大し、40%程度が安全策を取るのではないか。
IMFが行った外貨準備の運用者の調査では、リスクを拡大する方針の運用者の方が多かったが、割合は6;4くらいだろう。リスクを拡大する方針の外貨準備の運用者も実際は安全策を取ることが多いからだ。
安全、流動性を重視するなら国債だが国債のイールドも低いし、マイナス金利の場合、償還まで保有すれば損失になる。となれば利息のない金も選択肢に浮上する。
欧州の中央銀行はユーロ誕生以降、金保有を減らしてきたが、2010年からはネットで買い手に転換している。マイナス金利を早くから導入した国が多い欧州では、外貨準備の6,7割が金だ。米国も金ドル本位制時代の名残もあり、金保有高が高い。
一方で日本は外貨準備の2.5%、中国は2.2%、インドは6.3%とかなり低い。もっとも中国やインドは民間の金保有が高いので、その点では日本とは違う。
となれば今後、アジアの中央銀行などが金保有を増やすことが考えられる。