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市場養生訓

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第637回

2016年09月06日

 3年に一度の外為市場調査がBISから発表された。世界の中央銀行が今年4月中の外為取引を調査してBISがまとめたものだ。注目点を列挙しよう。
1.一番に驚いたのは、取引量が減少したことだ。世界の外為市場の1日平均の取引量は3年前の5.3兆ドルから5.1兆ドルになった。外為市場の拡大にストップがかかったのは今世紀になって初めてだ。1986年から調査が行われてきたが、その間も減少の記憶はない。BISの分析によれば3年前は日銀の異次元緩和政策で円の取引が急増したことと、ドル高の為替レートのせいで他通貨のドル換算額の減少を要因としている。だがロンドンのフィクシングレート不正問題に対する銀行への巨額の罰金やリスクテークに対する規制なども影響しているはずだ。

2.世界の通貨の中で人民元の取引シェアが3年前に比べて倍の4%になった。世界で8番目だ。人民元は国際通貨への階段を上り始めたと言える。スイスフラン(4.8%)、カナダドル(5.1%)、オージー(6.9%)を3年後に抜いて5番目の通貨になる可能性は高い。ただポンド(12.8%)円(21.6%)に並ぶには資本取引の完全な自由化や変動相場制への移行などが必要になる。その可能性は今のところ見えない。

3.ドルのシェアは相変わらず圧倒的だ。87.6%と前回とほぼ同じ水準だ。世界の外為取引の9割ほどが対ドル取引というわけで、米国の経済、金融政策などが為替レートの変動の最大要因であることを裏付けている。外為市場取引の観点からは基軸通貨としてのドルの地位は揺らいでいない。

4.ユーロのシェアは31.3%と前回より2ポイント低下した。ユーロは2010年のユーロ危機以降取引シェアの減少傾向にある。この傾向は世界で最も取引される通貨ペアのユーロドルのシェア(23.0%)にも反映されている。円のシェアは世界で3番目の21.6%と前回よりも低下したが、今世紀の傾向を見ればあまり変化はない。ドル円はユーロドルに次ぎ世界で2番目に取引される通貨ペアだが、17.7%と前回よりも低下したが、長期的にはあまり変化はない。

5.市場別ではロンドン市場が最大であることに変化はなく37.1%を占めるが、前回(40.8%)より低下した。今回はBREXIT決定前の調査であり、今後さらに低下する可能性がある。

6.シンガポールと香港市場のシェアはそれぞれ7.9%、6.7%と世界3位と4位を占めた。東京市場は5位に落ちた。ただし取引量が減少したわけではなく、世界の中でアジア市場の地位が上昇したと捉えられる。

以上です。次回の更新は9月20日になります。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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