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市場養生訓

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第638回

2016年09月20日

 ゴミ出しに使うような大きなポリ袋を抱えた男が何人も人込みの中に紛れて鋭い視線を周囲に向けていた。袋の中は札束の山だ。通貨はウズベキスタンのスム。彼らはドルを求めていた。1ドル6000スムが多かったが、7000スムもあった。この10日間くらいの話だ。

  一番高額な紙幣が5000スムなのですべて5千スムにしても100ドルで120枚の紙幣の束になる。1000スムなら600枚の束だ。周囲を気にしながらポリ袋から札束を無造作に取り出していた。

  銀行や公式の両替所では1ドル3000スム程度だったからブラックマーケットでは通貨の価値は半分だ。

  9月FOMCでのドルの利上げの可能性やドルのライボ(ロンドン銀行間貸出金利)が実際に上昇していることが背景にある。もっともライボの上昇は10月に実施予定の米国のMMF市場の改革によるものでテクニカルな要因だ。しかしライボは一般の貸出金利をはじめ通貨オプションや金利スワップなどの金融商品に利用される金利の指標でもあるので影響は大きい。

  ドル金利の動向は為替取引の9割近くが対ドル取引であるが故に多くの通貨のレートに影響を与える。特に新興国通貨へ与える影響は大きい。中でも市場規模の小さい通貨は大きな変動を免れない。1日で20-30%変動しても不思議ではない。

  いよいよ日銀とFEDの金融政策をめぐる会議が開かれる。これまで政策当事者たちの発言などで市場は右往左往してきたが、ここまで来たら結果を待つしかない。

  私はFEDの利上げはないと思っている。フェドファンドの先物レートから類推する9月利上げの可能性は15%程度だから市場の大半の見方と同じだ。もし上げた場合既にライボが上昇していることもあり、影響は想定以上になる可能性もある。そうしたリスクを冒して引き締め政策を実行するほどの理由は米国経済にはないと思う。

 ただそうなるとウズベキスタンのブラックマーケットでドルを買い漁っていた連中は死活問題になるほどの痛手を被るに違いない。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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