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市場養生訓

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第639回

2016年09月27日

 日銀が金融政策の検証と今後の方針を打ち出した。イールドカーブコントロールと物価上昇率2%を超えても金融緩和政策を継続する時間軸の設定が目玉のようだ。

 市場は特にイールドカーブコントロールと言う新機軸に目くらましを食らったようだが、果たして今回の日銀の政策は市場の円高圧力を回避できるほどに有効な政策なのだろうか。

 先週日銀が発表した政策と直後の総裁会見を聞いて最初に思ったのは、金融緩和政策の矛盾だった。

 それはマネタリーベースの拡大は継続すると言いながら、一方で短期金利マイナス0.1%、長期金利0%のイールドカーブを維持するとしたことだ。0%の長期金利を目標にする場合、国債の買い入れを減らすケースも出てくるのでマネタリーベースの拡大を維持するのは難しくなる。

 この点は昨日の講演で長期金利の目標を優先するとして、国債の買い入れ減額の可能性を示した。

 これでこの点の矛盾は解消したが、他にも疑問点はある。そもそも長期金利を中央銀行がコントロールできるのかと言う点だ。日銀の国債購入で長期金利が大幅に低下した事実を上げ、コントロール可能としたが、長期金利の低下と言う方向性に影響を及ぼすことと、一定水準に長期金利を維持することとの間には大きな違いがある。日銀は現在国債発行残高の3分の一程度を保有しているが、これが3分の2程度になれば日銀が国債のディーリングを日常的に行うことでコントロ-ルも可能かもしれないが、それは考えられない。それでは長期金融市場は市場として完全に死んでしまう。

 今回のイールドカーブコントロールの導入には金融機関への配慮があることも総裁は示唆した。マイナス金利導入後イールドカーブはフラット化し、銀行は資金収益を上げ難くなった。銀行は順イールドの形状でこそ収益を上げやすいが、短期マイナス0.1%長期0%ではフラットイールドと変わらない。

 わずかな利ザヤでは資産に対して要する資本コストをカバーできないので銀行が資産を積み上げるインセンティブにならない。

 いずれにせよ日銀が維持しようとするイールドカーブの形状は現状の市場を追認したもので、金融緩和策の強化ではない。総裁は講演で今後長期金利の低下の可能性を示唆したが、今回の会合では一層の金融緩和は決まらなかった。

 その点では円高がもっと進んでもおかしくない。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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