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市場養生訓

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第644回

2016年11月01日

 今週はFED,日銀、BOEで金融政策に関する委員会が開かれるが、市場は落ち着いている。政策上の変化が期待されていないからだ。

 フェドファンドの先物金利から推計すると、米国の来月の利上げを予測する者が7割以上に増えてきたが、来年9月でもその金利水準が続くと半数が見ている。つまり利上げが続く状況を想定していない。

 最近の市場では米国とユーロ圏や日本などとの政策の方向性が、相反する方向に向かう(ダイバージェンス)ということをトレーディングの指針にしてきたが勢いがない。それも利上げが続かない事情による。

 もちろん米国大統領選というビッグイベントを控えていることも市場の様子見気分を醸し出している。

 ただそれ以上に重要なのは中央銀行の政策に対する不信や限界を認識する市場参加者が増えたことだ。

 先日FEDの副議長のフィッシャーは人口の高齢化が低金利の要因であるとし、中央銀行の金融政策ではどうしようもできないと言った。これはFEDの調査部門が今月作ったレポートによる。それによれば人口の高齢化が低金利、低成長、低投資の背景にあり、中央銀行はなかなか長期金利を上げられないという。

 人口の高齢化は米国だけでなく、先進国共通の問題だが、こうなると金融政策を重要な変動要因としてきた市場参加者も当惑する。金融政策は市場の最も重要な変動要因であったが、その事情が変わるからだ。

 今後は経済指標や中央銀行の金融政策会合に加えて、いやそれ以上に出生率、死亡率、生産人口の推移など人口動態の統計にも目を向けなければいけなくなるかもしれない。

 人口動態を社会経済の変化のキーと捉えた学者の一人にフランスのエマニュエル・トッドがいるが、彼によれば米国は経済力、軍事力、文化力のあらゆる面で帝国を維持するのには力及ばず、恒常的な経常収支の赤字を海外からの資本流入で賄うシステムは不安定で、米国は他の国と同様生産と消費の均衡を取るべきとした。ドル基軸体制は実態から離れた亡霊になる。そうなればその変化の過程でドルは長期に下落するはずだ。

 10数年前にもよく言われていたことだが、また復活か。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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