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市場養生訓

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第647回

2016年11月22日

 市場で最大の影響力を持つと言われてきた米国の中央銀行のFEDもトランプ旋風に吹き飛ばされるのをこらえるのが精一杯のようだ。

 FEDの議長のイェレンや副議長のフィッシャーの発言も弱々しく聞こえる。昨日副議長は、マクロ経済政策は金融政策だけでなく、財政政策との協力で生産性の向上を図り、経済の長期的目標を達成するべきで、その点では新政権が打ち出すインフラ投資などの財政支出の効果を期待する旨の発言をした。

 確かにその通りだが、何かトランプ政権に阿る感じが言葉の端々に伺える。それは副議長が元イスラエルの中央銀行総裁というキャリアが関係するというよりも、米国の新大統領が持つ強大な権力のなせる業なのかもしれない。

 市場も一変した。

 フェドファンドの先物レートから推計する利上げの可能性は、12月は既定路線として、1年後の来年11月には市場の7割がフェドファンドレートを0.75-1.00%以上とみている。1.00-1.25%以上も4割近くいる。

 つまり12月利上げ後も、来年1度か2度の利上げを見込んでいる市場参加者が多くなったということだ。

 トランプが大統領選に勝つ前は、12月利上げ後は来年11月までに利上げなしや利上げがあっても1度だけの見方が大半を占めていた状況からは様変わりだ。

 ただ今回顕著だったのは短期金利もさることながら長期金利だ。長期金利の上昇が市場を主導した。為替も引っ張られた。

 為替は金利差で動くことは知られている。金利差と言っても、政策金利やユーロ市場の金利などの短期金利の場合もあるし、2年債が注目されることもある。

 それに10年債を中心とした長期金利の場合もある。今回は長期金利の差が変動の原動力になった。

 トランプの新政権が大幅な景気刺激策を打ち出すとの見通しがその背景にあるが、関係者は数百万の新規雇用を創出し、GDPを4%に引き上げる、との目標を挙げている。

 FEDにとって雇用を増やすのは自らの政策目的の一つなので大歓迎に違いないだろうが、トランプの手を借りなくても完全雇用に近い状態に近づいているとの認識があるので迷惑な感じも本音ではある。想定以上のペースでの引き締め策の可能性を含めた金融政策の不透明感が増すからだ。

 いずれにせよしばらくはトランプ旋風に逆らわない方がいいのだろう。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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