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市場養生訓

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第648回

2016年11月29日

 市場は政治リスクで腹一杯だ。食傷気味だ、というより消化不良を起こしている。政治リスクがこれほど連続して市場に影響を与えるケースは多くはない。BREXITの次は米大統領選でのトランプの勝利、そして来週末はイタリアの憲法改正を問う国民投票だ。

 イタリアの首相は改正案が否決されれば辞任することを表明している。ただでさえ金融システムの問題を抱えているときに首相辞任による政治の不安定化は問題の解決よりも問題の深まりに作用する。そこで昨日は欧州の金融株が売られ、ユーロも弱含んだ。

 イタリアはユーロを維持するための参加国の指針である安定・成長協定に謳われている債務残高の比率(GDPの70%以内)を逸脱しているが、規定内に収める展望も描けないでいる。

 しかしユーロ圏諸国にとってこうした問題は今回初めて起きたことではない。ギリシャ、ポルトガル、スペインなどでも債務問題が深刻化し、ユーロ危機につながった。イタリアでもそうだ。

 EUやIMFなどの金融支援や、銀行同盟などの構想改革でこれまでの危機は乗り切ってきた。まさに乗り切ってきたわけで解決してきたわけではない。

 歴史を振り返れば欧州の同盟はずっと同じような問題を抱えてきた。92年の欧州通貨危機の際は英国のポンドがERM(欧州諸国間の為替レートを一定の変動幅内に収めるシステム)から離脱し、ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガルなどの通貨が大幅な切り下げを迫られた。いわゆる弱い通貨群と呼ばれていた通貨だ。

 現在ユーロ圏あるいはEUという同盟の存在を脅かせているのもほぼ同じメンバーだ。

 92年の通貨危機の時はイタリアのリラもERMから離脱したが、ポンドと異なり、その後復帰した。

 その点ではイタリアの国民投票で憲法改正案が否決される場合、ユーロ圏の規律が弱まり、ユーロ危機が再び襲っても不思議ではない。

 来春の4月から5月にかけてフランスの大統領選もある。共和党のフィヨンと国民戦線のルペンの対決と予想されているが、いずれが勝利してもEUやユーロ圏の枠組みの変更が予想される。

 どんなに消化不良でも政治リスクは絶え間なく顕れる。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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