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市場養生訓

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第649回

2016年12月06日

 「市場が間違っているのではないか」

 ディーリングルームでの毎朝のミーティングで、たまにではあるがこんな発言がディーラーからでたものだ。いくつもの変動要因を挙げて自己の見方の正当性を主張するのだが、現実にアゲインストのポジションを抱えている者に参加者の視線は冷たい。

 先輩ディーラーや上司から、「市場は常に正しい。間違っているのはお前だ。」「つべこべ言わずに市場の流れに乗って儲けろ」と叱責される。

 イタリアの国民投票で政府の憲法改正案が否決され、首相は辞任表明を余儀なくされた。政局の混乱が予想され、EUに否定的な政党の台頭も予想される。しかもイタリアの主要銀行の一つの救済策を巡っての微妙な時期だ。これで期待された外国のファンドからの資本増強策も間に合わない可能性が強くなった。

 しかし市場の反応は穏やかだった。イタリアの長期債もユーロの為替も、株も。ユーロは最初は急落したが、その後はしっかり戻した。

 市場は金融システムのリスクを過小評価しているのではないか、ECBへの根拠のない期待が大きすぎるのではないか、こうした意見が今朝もどこかのディーリングルームで聞かれたことだろう。

 BREXIT,トランプと続いたサプライズで市場は慣れっこになってしまったのかもしれない。それに今後も政治イベントが続くことでサプライズのハードルが高くなってしまったのかもしれない。

 こんな時は基本に戻って変動要因の王道である米国金利を見るのも一つの手だ。

 短期金利についてはフェッドファンドの先物金利からの推計では、今月の利上げは確実だが、来年は0.25%の利上げが一度と見る市場参加者が多い。1年後に0.75%~1%の水準の可能性が40%ほどだ。利上げなしと2回の利上げの可能性がそれぞれ25%前後だ。利上げの時期は6月以降になっている。

 こうした見方が示しているのは為替市場での現行の水準には利上げが既にかなり織り込まれているということだろう。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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