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市場養生訓

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第653回

2017年01月10日

 年初早々、人民元の金利が30%,50%と高騰した。季節的要因ではなく、人民元売りのショートポジションを締め出すために中国人民銀行が資金を絞ったためだ。

 自国通貨の売り圧力に対抗するために中央銀行は、ドル売り市場介入や利上げをする。これらの手段が功を奏さないと通貨危機となって影響が社会全般に及んだり、世界に広がるケースもある。

 92年に欧州全域に広がった通貨危機の時のポンドの金利や97年のアジア通貨危機の時のタイバーツの金利も数十%あるいはそれ以上に上昇した。こうした通貨の売りポジションを保有する者はポジションを持ち越すためにスワップをするが、そのコストが膨大になるのでポジションを解消する者が多くなる。それで一時的に通貨高に触れる。

 時にはポジションの繰り越しができない場合もある。というのもその国の銀行が中央銀行の方針で流動性を提供しない場合があるからだ。つまりスワップのレートをだれも提示しなくなる。これは国内経済には最悪なので、滅多に取られる手段ではないが、アジア通貨危機の時にはそのケースもあった。

 そうしたリスクもあるのでポジションの解消が進み、通貨下落は収まるのだが、通貨危機のような事態に発展するケースでは一時的な休止の後、さらに大きな通貨売り圧力が繰り返される。それで結局、当該国は制度やシステムの変更を余儀なくされる。

 さて年初の人民元の変動は、通貨危機に発展する序曲だったのだろうか。

 昨年は中国からの資本流出が続き、人民元が売られ、外貨準備が減少した。中国の国有企業の債務の大きさや金融システムのリスクが問題になった。今年もこうした流れでスタートしたが、人民銀行が一段と踏み込んだ資本流出規制を取り始めた。

 人民元の下落も止まって、国内の人民元は05年の切り上げ以来の上昇幅(一日の)を示した。

 中国は中長期的な目標であった資本取引の自由化を後退させた。その見返りに人民元の変動の管理の幅を広げた。

 そうした状況で3兆ドルの外貨準備があれば通貨危機に発展する可能性は少なくなったとみるのが妥当だろう。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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