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市場養生訓

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第655回

2017年01月24日

 今はすべてがトランプで、米国の新政権の政策の具対的な中身とその実効性の追求に世界は必至だが、中国に気になる動きがある。

 中国の11月の米国債保有が660億ドル減少して1兆ドルちょっとの残高になったことが先週明らかになった。これに関しては、いろいろな見方や情報が提供された。

 ドル売り人民元買いの介入資金のために米国債が取り崩されたこと、中国の資本流出が昨年から継続していること、中国当局が資本流出の継続を抑制するために、従来の資本取引の自由化促進の方針に反して規制措置を採ったことなどが伝えられた。これらは中国のリスクとそのマネージメントに関することだが、他国との関連では日本が中国を抜いて米国債の保有額では世界一になった(先月に続き)といった見出しにはなっても価値の低い情報の他には、中国の米国債の売却が米国の長期金利上昇につながる懸念が指摘された。

 しかしもう一つ重要な見方が欠落していた。

 それは中国がドルから他の通貨や金などへのシフトを進めている可能性だ。というのも介入額に比べて米国債の減少額が多すぎるからだ。外貨準備の減少額に比べて米国債の減少額が多すぎるともいえる。

 もちろん当月のドル売り介入額と外貨準備の減少額は一致しない。運用益もあるしドル以外の通貨のドル評価額の変化もある。1年くらい前のドル売り介入時には米国債の保有額はそれほど減っていないのは他のドル資産を取り崩したとの見方もある。しかしどう見ても米国債の減少額が多すぎるのだ。

 これらの事実の辻褄を合わせるには中国がドルから他の通貨などへのシフトを進めたと見るのが妥当だ。

 米国債の売却はセンセーショナルになりやすい。米中の関係やトランプ政権の姿勢を見ればなおさらだ。中国も表立って実行し難い。それで介入資金の捻出の裏に隠れた。実際資本流出は継続しているし、介入をしている。しかもドル売りだ。通貨安操作のレッテルしか頭にないトランプも文句は言えまい、ということになる。

 中国はドル基軸体制からの脱却を長期目標に挙げている。トランプ政権になってそうした動きを加速させる可能性は強い。

 それに6-7割がドル建てと推計される3兆ドルもの外貨準備の運用責任者が、ドルのリスクを減らすのはリスクマネージメントの観点から極めて真っ当な判断だ。トランプが大統領になり不確実性が増す世界ではなおさらだ。もちろん危機に備えるために一定程度のドルの流動性は確保した上のことだ。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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