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市場養生訓

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第656回

2017年01月31日

 米銀にいたとき、私の上司が英国人から元FRBに勤めた経験のある米国人へ交代した。その時ロンドンやニューヨークを含めて世界各地で勤務経験のあるベテランのスタッフからアドバイスを受けた。新任の上司は前任者との違いを際立たせるため、それに早く実績を上げようといろいろシステムや方法を変えるはずだ。だから1年間は様子を見ろ。つかず離れず我慢しろ、と。

 トランプと昨日解任された司法長官代理のやり取りを見て、その時の上司を思い出した。トランプのような上司を持つ人々にとって自分の価値観や信条とどのように折り合いをつけていくかはきっと容易ではないだろう。私は結局1年も我慢できず、英銀に移ることになった。

 米国への入国制限の問題でトランプ対する風当たりは強くなり、市場へのネガティブな影響もみられるようになったが、今週は主要国で金融政策を決める会合が続く。

 日銀はすでに現状維持を決めたが、英国や米国でも金融政策は現状維持が予想されている。トランプが大統領に決まってから景気や市場にはポジティブな風が吹いてきた。しかし最近ではトランプの新政策が一定の時間内にどの程度実行されるのか、について懐疑的な見方もでてきた。最大の影響力を持つ米国の政策が不確定要因である以上、中央銀行が様子見になるのはやむを得ない。

 昨年末FOMC(米連邦公開市場委員会)のメンバーは今年3度の利上げを予測する人が最も多かったが、直近の市場の見方はどうだろう。

 フェドファンドの先物レートから推計する可能性としては、今年は2度の利上げ、つまり12月までにフェドファンドが1%-1.25%の水準を見ている人が最も多い。2回以内と見る人が6割以上だ。3度の利上げを見る人は4分の一ほどだ。

 その点では昨年に続いてFOMCより金融市場参加者の方が景気や物価に対する見方が慎重と言える。ただこれもトランプが言ってきた減税やインフラ投資など財政政策の規模やタイミングによる。

 入国制限に見られた混乱が今後も続き、議会でもトランプの手法に対する不信感が深まれば財政政策の実効性にも影響する。そうなれば長期金利の上昇、利上げ、ドル高という基本シナリオが狂ってくる。

 元FRBの上司だが、銀行リタイア後、米国西海岸の街で薬物中毒のため死んだとの風の便りがあった。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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