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市場養生訓

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第668回

2017年05月02日

 先進諸国が量的緩和などの超金融緩和政策を始めたとき、その出口戦略の一般的なシナリオは次のようなものであった。米国が最初に量的緩和の縮小と利上げを始め、ドル高になり、英国が続き、欧州圏や日本が次々と後を追いかける。為替レートもその順番に合わせて金利差を軸に変動を繰り返す。このような為替レートの変動は絶好の収益機会をもたらす。

 市場は将来の事象を単純化してとらえる傾向があるので、現実と異なるのは当たり前だが、それにしても実際の出口戦略の複雑さとの差は大きい。

 先週、スウェーデンの中央銀行のリクスバンクは量的緩和の延長を決めた。国債などの購入とマイナス金利(-0.5%)の継続だ。昨年のGDP3.3%の数字が示すように景気はいい。失業率も金融危機以来最低で、直近の景気信頼感指数も20年来の高さだ。そのため政策委員会でも意見が割れた。3人の副総裁が緩和策の継続に反対したが、総裁が賛成し、継続が決まった。

 リクスバンクには苦い経験がある。以前利上げを決めたが、すぐに元に戻した。インフレ率の低下のためだ。日本も似たような経験がある。ゼロ金利政策や量的緩和政策を止めたもののすぐに復活せざるを得なくなった。こうした経験は他の中央銀行にも影響を与えている。

 リクスバンクは2009年7月に最初にマイナス金利を導入した中銀で、主要な中央銀行ではないが、金融の分野では一目置かれる存在だ。その政策が市場の期待に反したり、政策委員の間で意見が割れたこと自体が出口戦略の複雑さを物語っている。

 ECBや日銀も出口戦略はまだ先のようだ。いずれもインフレ率や賃金、消費などが期待通りに上昇しないことによる。

 それらに比べれば米国は順調に利上げのサイクルに入っているようには見える。3月に続いて今のところ6月の利上げの可能性が高い。フェドファンドの先物金利から推計する確率は7割に近い。もっとも2週間ほど前には5割以下にもなったので、今後の景気指標如何で確率が低下することも十分考えられる。

 こうした中でドル高が進んでいないことは注目だ。考えられるのは、一つにはドルの利上げのサイクルに確信が持てないこと、市場では12月に今年三度目の利上げをする確率は現時点で5割だ。もう一つは金利差が誘発する投機為替よりも中国、ロシア、中東などの戦略的なドル離れによる需給の為替が上回っていることだ。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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