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市場養生訓

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第706回

2018年02月06日

 トランプ大統領はダボス会議で株高を自らの政策の成果として自慢したが、株価の大幅な下落がすぐに起こるとは想定外だったろう。先週末に発表された米国の雇用統計が引き金を引いた。その中で時間当たりの賃金が前年同月比2.9%上昇した。09年6月以来の伸びで、市場の予想を超えた。

 これで雇用の改善とインフレ率上昇の関係が機能すると判断した市場参加者は、インフレ率上昇が金利上昇に繋がり、金利上昇が株の下落を引き起こすと判断した。それに減税などによる債務の拡大もある。

 だが昨日の市場を見ると長期債のイールドも2年債のイールドも短期のフェドファンドの金利も高値からは低下(価格上昇)している。

 市場参加者の金利政策に対する見方も先週末と昨日では大きく変わった。フェドファンドの先物レートから判断する利上げの可能性は、それまではFOMCの委員と同じく年3回だったが、直近では3月と9月の2度になった。

 3月の利上げの可能性も10ポイント以上低下して60%強になった。

 ここでインフレを抑制するために利上げに重点を置くか、株価などの資産価格の急落を防ぐために金融緩和に重点を置くかで、政策は大きく分かれる。市場の変動の有り様も変わる。

 それは今週から新議長に就任するパウエルが率いるFEDによる。FEDの政策目標は物価の安定、雇用の拡大、それに金融システムの安定がある。当面は物価も雇用も順調のようだから、金融システム不安を起こさないように金利の引き上げは慎重になる、と金融市場は判断したことになる。

 金融市場の見方が妥当ならば、今後の新議長の発言も前任者イェレンと同様、金融緩和に重きを置いた上での出口戦略の進行を強調する可能性がある。

 ただトランプ減税などで戦争や恐慌期以外では最大の債務残高を抱えることになる米国の利上げ圧力は、今度強まることはあっても弱まることはない。景気拡大によるマイルドなインフレ下の金利上昇ならば株価は上昇し、ドルも上昇するだろうが、そうでない場合は、異なるシナリオが用意される。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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