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市場養生訓

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第712回

2018年03月20日

 この1年余りの間で特筆すべき為替レートは何だろうか。ポンドか、BREXITの中でポンドドルは予想以上の上昇基調を辿ってきた。それともトランプ大統領のNAFTA見直しの言動に振り回され、方向感を失ったメキシコペソだろうか。他にもユーロや南アランドを上げる人もいるかもしれない。

 だが香港ドルは外せない。USドル香港ドルのレートは直近では7.84の半ば水準で推移している。10年以上見たことのない水準だ。

 USドル香港ドルは固定相場制で、7.80を中心レートに7.75から7.85の変動幅が設定されている。だがこの10年ほどは概ね中心レートよりもドル安香港ドル高の水準で推移してきた。しかも下限の7.75水準で取引される期間が長かった。

 こうした固定的な為替レートを維持するには香港の金融当局は自由な資本移動を制限するか、自国の金利を米国の金利水準に合わせる必要がある。香港は基本的に資本移動の自由を維持してきたので、金利水準を米ドルに合わせることになる。そうしないと金利裁定取引を誘発して固定的な為替レートを維持できなくなるからだ。

 下限にレートが張り付いていると言うことは、香港ドルの金利の方が米ドルよりも少し高い時であり、上限近辺で推移しているのは香港ドルの金利水準が米ドルよりも若干低い時だ。若干と言ったのは金利差が大きければ、変動相場制と違い為替リスクが限定されているので金利裁定取引を誘発してしまう。

 こうした根本的な変動要因の他に政治的な理由で中国からの資本流入が急激に増加したり、時には避難通貨としての需要もあり、下限レート方向へのバイアスがかかる。

 しかしそうした状況が変わった。香港からの資本流出が目立ってきた。これは前述したように香港ドルの金利が米ドルよりも若干低いからとの理由もあるが、中国の資本取引規制の影響が考えられる。中国は数年前金融市場が混乱したことから資本流出規制を強めた。そのため香港の中国資本などが資本を国外に流出させていることが考えられる。それに香港の民主化に対する中国のブレーキが強まっていることは香港資本の流出を加速させる。

 中国の内閣の陣容が決まったが、注目は副首相の劉だ。彼が対米関係や金融などの経済関係の司令塔だ。彼は以前、金融緩和政策を批判し、信用の膨張が金融システムの危機に繋がると指摘した。

 管理規制色の強い政策が見込まれる。その点では当分資本流出規制を緩める可能性は少ないと思われる。その点では米ドル香港ドルは引き続き上限近辺で推移する可能性がある。少なくとも中心レートよりも上(ドル高香港ドル安)での動きになると思われる。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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