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市場養生訓

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第718回

2018年05月01日

 先日ワシントンで開かれたIMFの春季会合で米国は、IMFに対して貿易不均衡の是正措置をとるように求めた。従来の不均衡是正のための国際的な枠組みは機能しないので新たな厳しい措置を具体的に採れとの主張だ。不均衡拡大に繋がるような経済政策、為替政策、貿易政策を採る国にははっきりと警告を与えるべきとの考えだ。

 今回の米国が仕掛けた貿易収支赤字の削減を求める政策は、米国の保護主義、対世界の自由貿易主義あるいは二国間主義対多国間主義の対立と捉えるのが一般的だ。そこにトランプ大統領のキャラが加味され、米国は我儘で傍若無人のヒール(プロレスでの悪役)を演じているようだ。IMFの会合でもそうだ。

 ただこうした対外不均衡の是正は必ずしもヒールの役割ではない。世界金融危機では世界の対外不均衡が金融危機で急速に縮小する過程で、市場や実体経済に大きな打撃を与えた。

 そこで世界は対外不均衡の拡大を抑制する必要性を痛感し、金融危機後のG20では経常収支の不均衡の是正に取り組んだ。経常収支の対GDP比の数値目標を課すことも提案された。米国や日本は賛成したが、ドイツや中国は数値目標には反対した。不均衡是正には賛成だが、数値目標に縛られたくないのだ。

 その時の米国の案では4%だったが、その後ドイツの経常収支の黒字幅は増加傾向をたどり現在はGDP比8%を超えている。米国の赤字のGDP比はその後縮小したが、最近は増加傾向で3%ほどだ。中国の黒字は縮小傾向が続き、GDP比1%半ば水準だ。ただ中国は対米黒字額がドイツと並んで大きく、米国の標的になっている。

 つまり対外不均衡の是正の国際的な取り組みは成功しているとはいえず、その点では米国のアプローチを容易に非難できない。いずれにせよ貿易戦争は短期に決着はしない。

 経常収支の問題は為替の有力な変動要因だが、金利ほどではない。それは世界の為替は投機為替が9割以上で実需は1割以下だからだ。経常収支に関する為替は実需の代表だが、金利は投機為替の動向を左右することが多い。

 だが金利に大きな動きがなければ実需為替の動向が投機為替にも影響を与える。それか変動相場制移行の為替市場が経験してきたことだ。米国の10年債のイールドが3%を超えるかどうかは金利の大きな動きの一つだ。3%を超えずに安定し、イールドカーブのフラット化が進むようなら、金利要因は弱くなる。
 
 
 
※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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