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市場養生訓

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第719回

2018年05月08日

 アルゼンチンが先週3度の利上げをした。まず27.25%から30.25%、次に33.25%へ、そして40.0%に引き上げた。ドル売りペソ買いの市場介入をしたが、ペソ売りが止まらなかったからだ。

 短期間に利上げを繰り返さざるを得ないのはまさに通貨危機だ。ポンド危機の時、英国の中央銀行は1日に2度の利上げを行ったし、ロシア金融危機の時のルーブルも利上げを繰り返した。

 直近のドルペソの為替レートは22.0水準だが、年初に比べれば2割強ペソ安になっていて、先月の終わりごろから特に売り圧力が強まった。

 ではこうしたペソの危機は広範な通貨危機に広がるのだろうか。例えば新興国市場通貨危機や中南米通貨危機になるのか。四つの点から検討してみる。

 今回のペソの下落の要因の一つにドル金利の上昇がある。最近の新興国市場通貨は全般的に下落傾向だ。トルコリラ、ロシアルーブル、メキシコペソなどのようにそれぞれの特殊要因が下落に拍車をかけている例もあるが、ほとんどの通貨が対ドルで弱含みだ。特に米国の10年債のイールドが3%を付けたあたりから一段とその傾向が強まった。

 対ドル為替が下落すると、ドル建ての負債が多い政府や企業は実質的な返済額が増加するので困る。特に短期の借り入れに依存している場合はプロジェクトの中止に追い込まれたり、デフォルトに陥ることもある。社会的にも悪影響が拡大し、本格的な通貨危機に発展する可能性が出てくる。

 ドル金利の一層の上昇はこうしたリスクを大きくするが、金利差が拡大し、資本が当該国から米国へ流出するだけでは通貨危機には発展しない。通貨安になるだけだ。それはインフレを悪化させるが輸出には好影響だ。ドル金利が頭を打てば通貨安は止まる。

 二つ目は、新興市場国側のインフラの整備による通貨危機対応能力の向上だ。外貨準備の増加や、多国間あるいは二国間の通貨スワップ網の整備で市場介入資金は格段と増加した。自国通貨建ての資本市場の整備で外貨建て借り入れに依存する比率が低下した。そのため次から次へと波及する通貨危機の感染力が低下した。

 三つめは通貨危機を波及させる当事者である市場参加者側の事情の変化がある。従来の通貨危機の主役はヘッジファンドであり、有力な金融機関のディーラー達であった。だが金融危機を契機としたリスク規制の強化や、ライボ問題やフィクシングレート問題での多額の罰金や解雇、情報共有に対する監視強化などで、有力なディーラー達は従来ほどのパワーを失った。

 四つ目は、アルゼンチンの政治状況だ。通貨は大幅に下落しインフレ率は上昇し、週に3度も利上げをしても、マクリ大統領に対する支持率は50%近くある。痛みのある改革を実行する現政権に対する信頼は保たれているようだ。その点では危機の拡大が抑制される可能性はある。だが経常収支の赤字は拡大し、外国からの投資が必要だ。40%に利上げをしてペソの下落は一服したようだが、これで収束することはないだろう。

 以上4つの点を総合的に考えると、今回のペソ危機が全般的な新興国市場通貨危機に繋がる可能性は小さいと思う。
 
 
※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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