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市場養生訓

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第734回

2018年08月28日

 一週間ほど前トランプ大統領は、FEDが進めている利上げに反対の意思表示をした。減税や規制緩和で景気を浮揚しているのに利上げで水を差すなと自らがFEDのトップに任命したパウエルに圧力をかけた。

 そして舞台は毎年恒例のジャクソンホールの会議に移りパウエルが講演をした。そこで市場の反応はどうか。

 直近のフェドファンドの先物レートから類推する利上げの可能性を見ると、今年はあと2回、9月と12月で揺るぎはない。むしろ1週間前よりも可能性は高まった。来年の3月の利上げの可能性は半分以下だが、1週間前よりも可能性は増えた。

 この点ではパウエルはトランプの圧力に全く屈しなかった、と市場は判断した。利上げサイクルは続けると言うことだ。

 だが市場のもう一つの指標であるイールドカーブを見ると、フラット化が進行している。米国の10年債と2年債のイールドの差は直近で20ベーシスポイントに縮小した。さらに縮小が進めばイールドカーブは、短期金利が長期金利よりも高い状態の逆イールドの形状になる。

 これは先行きの景気やインフレ率が低下するときに見られる現象でもある。もしそうした先行きの経済状態を反映するとすればFEDの金融政策も来年か再来年に代わる可能性が出てくる。

 FEDの金融政策が変わる契機になるもう一つの可能性は新興国通貨安の進展だ。トルコ、アルゼンチン、ブラジルなどは既に大幅な通貨安に見舞われ、通貨危機の様相さえ示した。

 その背景にドル金利の上昇があることは明らかだが、それでも全般的な新興国通貨危機に至らないのはメジャーな新興国通貨が崩れていないからだ。

 それは新興国通貨の中で世界で1,2位の取引量を持つ人民元とメキシコペソだ。

 人民元は中国当局が人民元安を抑制するための様々な措置を現在採っている。人民元売りの先物取引に資金コストを課したり、人民元レートの基準値の設定を変更したりすることなどだ。以前功を奏した措置だが、今回も成功するかはわからない。

 メキシコペソに関してはトランプが大統領に就任する前からNAFTA(北米自由貿易協定)の見直し問題に大きな影響を受けてきた。昨日は新たに米国メキシコ貿易協定が大枠で合意された。本来ならばメキシコペソは大いに買われていいはずだ。ドルペソで17台に向かっていくと思いきや直近では19台に向かうような動きもある。

 いずれにせよ人民元とメキシコペソの動向いかんでパウエルもトランプの意向を汲むことになりかねない。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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