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市場養生訓

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第737回

2018年09月18日

 とても重要な事柄だが、その時はほとんど市場では重要視されず、後で(数か月から数年)大きな市場変動要因になるケースがある。顕著な例としては、米国が純債権国(対外債権額が対外債務額を上回る)から純債務国(その逆)へ転換したときだ。

 84年の春にFEDが翌年に米国が純債務国に転落する見通しのレポートを出した。市場でも一部では関心を集めたが一時的だった。このニュースでドル売りポジションを作った市場参加者はショートカバーの苦しみを味わうことになった。ドル円で言えばその後もドル高基調が続き、翌年2月のピーク時まで続いた。大統領の一般教書演説でもこの件が触れられ、ようやく構造的変化が広く市場でも認知されるようになった。

 そうした構造変化と金利要因などで支えられたドル高は適合性がなく持続不可能との見方が浸透し始めた。ドル暴落の可能性さえ危惧された。そこでドルの秩序だった下落を計ることを目的として先進5か国が9月に秘密会議を開いた。プラザ合意だ。

 先週EUの委員長は欧州議会の施政方針演説の中で、ユーロをドルに並ぶ国際通貨にすることを目指すとした。これは現行のドル基軸通貨体制からドルとユーロの二極体制への転換だ。

 EUは原油やガスなどのエネルギー資源の輸入の80%はドルで払っているが、米国からは2%しか輸入していない。ほとんどロシアや中東からの輸入なのにドル建てはおかしい。そこで委員長はこれをユーロ建てにすることを目指す。

 ユーロがドルと並ぶ基軸通貨になるためには、第一に国際取引の決済通貨としての利用を増やさなければならない。第二に世界各国の外貨準備の通貨としてユーロの割合を増やすことが求められる。現在はドルが6割、ユーロ2割だが、これを3割以上に増やす必要がある。一時26%くらいに増えたこともあるので非現実的な目標でもない。

 ドル基軸通貨体制からの脱却は中国やロシアが企図し、人民元建て原油取引の先物市場の創設など具体策も出ているが、道のりは遠い。人民元の世界の外貨準備に占める割合は2%にも満たないことが示すようにドルとの差がありすぎる。

 その点ドルに次ぐ2番手の通貨ユーロには可能性がある。もちろん容易ではないがそれを目指して中国や中東、ロシアにも働きかければいい。

 EU、ロシア、中国に共通するのは米国の経済制裁の影響を受けていることだ。制裁の影響を免れないのはドルの力だ。その点ではユーロが基軸通貨の一翼を担うことは中国やロシアなどの利益になる。

 こうした通貨体制や貿易体制(自由貿易から保護貿易)の変化と言った構造的変化は金利などの日常的な為替変動要因とは異なり、市場への影響にはタイムラグがある。数か月から数年。ただ構造的要因が市場に広がると通常の要因は圧倒される。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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