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市場養生訓

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第746回

2018年11月20日

 「工場にいた頃はボルト一つ省くためにどうすればいいか、何銭の世界に神経をすり減らしてたが、ここでは為替予約のタイミング一つで何千万、何億が平気ですっ飛んでいく。胃薬が手放せません。」

 昨日カルロス・ゴーンの報酬や資産に関する不正が報じられたとき、日産の為替担当者の言葉を思い出した。私が米銀で顧客担当のディーラーをやっていた頃の話だ。

 日本の輸出は円建てもあり為替リスクを伴わないケースもあるが、多くは外貨建て、特にドル建てが多い。ユーロ建てもある。だから輸出企業は為替レートのヘッジには頭を悩ませる。なにせ1ドル360円の時代から円高の歴史を潜り抜けてきたのだ。

 外貨建ての輸入を増やして為替リスクを伴う額を減らすとか、関連会社間で外貨建て債権と債務を相殺しリスク部分を減らすとか、先物為替予約の割合をあらかじめ決めておくとか、いろいろ工夫してなるべく為替変動から生じるプレッシャーを軽減するようにしてきた。

 それでも為替レートのリスクやプレッシャーからすべて逃れることは不可能だ。

 現在のように米中貿易戦争の長期化、BREXITの決着の仕方、イタリアの予算案を巡るEUとイタリア政府との攻防など、市場に大きな変動を与える可能性のある要因が目白押しの局面の時は特に容易ではない。ポンドやユーロの変動がドルの動きを規定することもあるからだ。

 ただ外為市場ではドルの通貨ペアが全体の取引の9割に及ぶことから、ドル自身の要因が最も大きな影響力を持つことが多い。

 最近金融市場でドル金利に対する見方に変化があった。FEDの副議長の金利や景気に関する発言が契機だ。米国の10年債は直近で3.07%と低下した。イールドカーブ(10年債と2年債の差)も27ベーシスポイントと再び縮小してきた。

 フェドファンドの先物レートから類推する利上げの可能性を見ると、来月12月の利上げはほぼ確実だが、来年の利上げが6月に1度になった。それも半分ちょっとの可能性だ。ほんの1週間前には3回の利上げの可能性が高かったわけだから劇的な変化と言ってもいい。

 そうした市場環境を反映してドルの為替の指数も低下している。合意なしのBREXITの可能性が増しても、イタリア政府がECの要求する予算案の修正に応じなくても、対ドルでポンドやユーロの下げが今のところ目立たないのはドルの影響だ。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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