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市場養生訓

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第751回

2018年12月25日

 トランプ大統領は執念の人だ。誰かを首にしたいと思ったら、する。すぐには実行できない時でもその思いは消えず、いつかタイミングをとらえて実行する。自分の言うことを聞かなかったり、自分を馬鹿にしたりした者は決して忘れない。国務長官、首席補佐官、国防長官など、皆そうだ。

 利上げをするなと警告したFEDの議長のパウエルも首にしたいようだ。財務長官は火消しに動いたが、大統領はいつかその機を捉えるつもりだろう。それが法的に可能かどうか、市場にどんな影響を与えるかを考える余地はない。何よりも執念が勝る。

 それにしても中央銀行の総裁に政治的圧力がかかることは珍しくない。トルコの大統領も利下げ圧力をかけ続けたし、インドの中銀総裁は中銀の独立性を護れないと最近辞任した。

 ほとんどのケースでは政治が中央銀行に無理強いをする。インフレ率が高いのに景気浮揚のために利下げを求めたり、通貨の下落が激しいのに利上げをさせない圧力をかけるなどだ。つまり市場の常識的な見方と乖離した要求を中央銀行に突きつける。

 米国のケースはどうか。先週のFOMCとその後の会見でFEDは来年2度の利上げとバランスシートの削減をこれまでのペースで続行するとした。利上げペースは若干スローダウンするものの引き締め政策の維持は続けるとした。

 だが市場では来年の利上げの見込みは、フェドファンドの先物レートからの類推によれば、ゼロの可能性が高い。つまり現在の金利水準が維持される。

 つまりトランプ大統領の方が市場の見方に近い。景気がピークを過ぎ、インフレ率が抑制されている指標が最近出ているのに、利上げはおかしいという大統領の主張の方が市場の感覚と合っているのだ。

 米国の10年債は2.74%まで低下した。3%を超えていたことが遠い過去のように思える。2年債と10年債のイールドカーブは縮小傾向にあり、フラット化は着実に進んでいる。

 ドル高と高金利がトランプ政権の減税と規制緩和による景気刺激効果を削いでいるという政権の主張もおかしくはない。

 FEDの副議長でニューヨーク連銀総裁はFEDの政策の柔軟性を強調して景気後退の兆しやインフレ率の低下に対応能力のあることを強調して、株式市場の動揺を鎮めようとした。

 来年はFEDのシナリオよりも市場のシナリオの方が、現実味がありそうだ。

 今年は株が大波乱でしたが、来年は為替が波乱含みになりそうです。皆さん良いお年を。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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