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市場養生訓

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第761回

2019年03月12日

 インドはGDP(名目)の規模で見ると世界で6,7番目あたりだが、インドルピーの為替取引高は世界で17番目だ。BISの今年の調査では順位が上がると思われるが、その兆候の一つがロンドン市場での取引の拡大だ。

 特にNDF(Non Deliverable Forward)取引の急増だ。2年前の3倍に拡大した。NDFは先物為替取引の一形態だが、通常の先物為替取引とは異なる。通常の先物為替取引は、例えばドル円の6か月先物取引では6か月後にあらかじめ決められたレートでドルと円を交換する。

 一方6か月のNDFの場合、あらかじめ決められたレートと6か月後のスポットレートの差額をドルで決済する。似た取引に通貨先物取引がある。元本の交換を行わず、差額だけの決済を行う清算取引だ。その点では同じだが、決済通貨が違う。ドル円の通貨先物場合なら円で決済する。

 通常の先物為替取引や通貨先物取引に比べるとNDFはポピュラーではない。市場規模も通常の先物取引市場はもとより、通貨先物市場に比べても小さい。

 それでもNDFが生まれたのには理由がある。この取引のミソは決済通貨にある。為替管理が厳しく、通貨が外に出ることを規制している国の通貨であっても取引が可能になる。

 NDFが発生したのは90年代だが、特に人民元の取引に利用された。今でも人民元の為替管理や諸規制は残っているが、当時はもっと厳しかった。ドル人民元のNDFでは人民元の資金移動はせずに、ドルでの差額決済になるので、海外の銀行も人民元の投機為替取引が可能になった。

 NDFはどの通貨でも可能だ。ドル円だってNDFでできる。ただドル円は通常の先物為替市場も通貨先物市場も整っているので敢えてNDFを必要としないだけだ。

 通常の先物市場だって世界の貿易取引が増加するにしたがって為替レートのリスクヘッジが必要になる生まれたものだ。二つの通貨の金融市場での金利差から先物レートを導き出した。需要があるところに市場はできるのだ。

 ところでインドルピーは昨年下落局面が多かった。その理由にロンドン市場でのNDFを指摘する見方がある。海外市場の方が政治や経済の変化に敏感に反応する傾向があるからだ。

 アジア通貨危機の時のタイバーツなどの下落の時は通常の先物市場の利用が多く、当局は地場の銀行のバーツの勘定に規制を課した。それである程度は投機為替を抑制できた。だがNDFの場合そうした事態になっても規制は効かない。その点では当局もNDFの拡大は気になるところだろう。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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