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市場養生訓

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第763回

2019年03月26日

 FEDが市場に近づいたと思ったらまた離されてしまった。先週のFOMCで、今年の利上げ見通しを撤回し、バランスシートの削減は9月で終了すると決めた。すると市場の見通しはそれまでの利上げなしから、年内の利下げを見込むようになった。

 フェドファンドの先物レートから類推する直近の金利見通しでは、今年12月で0.25%以上の利下げの可能性が70%ほどになった。0.5%(2回の利下げ)も25%ほどの可能性だ。

 FOMCの前と後では様変わりと言っていい。背景には米国経済のピークアウト感ばかりでなく欧州、中国など世界経済の先行きに対する懸念が増したことがある。

 事実、米国債ばかりでなく、各国の国債が買われた。ドイツの国債は再びマイナス金利になった。世界で、マイナス金利で取引されている債券は10兆ドルを超えた。10兆ドルを超えたのは2017年の9月以来のようだ。

 こうした全般的な金利水準の低下が進行する中で、米国債の10年のイールドより3か月物の方が上回ったことが注目された。逆イールドの形状になり先行きの景気後退を表すものとされた。俄かにこれまでの景気後退局面とイールドカーブについての議論が沸き上がった。

 だが違和感がある。確かに10年債と3か月物はFEDが利用するイールドカーブの指標ではあるが、例えば短期金利との連動性が高い2年債と10年債では順イールドで直近のイールドスプレッドはFOMC前とあまり変わってない。

 それに一般的にイールドカーブが先行きの景気の指標になり得るというのは、好況時は資金需要が旺盛になり、不況時には不活発になることから言われたものだ。今回の長期債の国債を中心とした債券需要はリスクオフから発生したものだ。資金需要の低下とは関係なく、金余りの資金がイールドやキャピタルゲインを狙った結果の金利低下だ。その点ではイールドカーブの解釈がずれている。

 つまり今回市場はちょっと過剰反応だ。FEDは今年の利上げはなしとしたが、来年は1度の利上げを見込んでいる。その点では市場は大分先を行ってしまった。市場の方向性は正しいと思うが、ちょっと先走り過ぎた感がある。
 

※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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