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市場養生訓

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第766回

2019年04月16日

 先週のG20財務省・中央銀行総裁会議で、経常収支の不均衡が議題になった。今年の議長国日本が提起した議題だが、会議前も会議後も市場の関心は薄かった。市場ばかりでなく参加国の多くも熱意に欠けていたようだ。

 本来、経常収支の不均衡は重要なテーマだ。実際過去のG7、G20などの国際会議で何度も取り上げられた。市場にも大きな影響を与えてきた。経常収支の不均衡是正を掲げて、G5(米、英、仏、西独、日)がドル売り協調介入を実行したプラザ合意の会議はとくに有名だ。その後もG7(G5+加,伊)によるルーブル合意などが続いた。経常収支の不均衡は為替変動要因として定着していった。もっとも資本市場が各国で発達し取引が拡大するに従い、経常収支の不均衡の為替レートへの影響もその頻度や程度において相対的に低下していった。資本市場の発達が不十分な新興市場国においては依然として為替変動要因として経常収支の比重が高い。

 だからと言って経常収支の不均衡の重要度が低下したわけではない。世界金融危機では経常収支の不均衡が蓄積されたがゆえに、サブプライムローン危機やリーマンショックなどを契機に急激で大量の資本移動が発生し、市場は機能不全になり実態経済にも大きな影響を与えることになったからだ。

 今回のG20が熱意のないものになったのには二つの要因がある。一つはG20で重要な決定をするのが難しくなったことだ。世界金融危機後のG20で経常収支の不均衡を管理するため各国に数値目標(経常収支のGDP比)を設定する案が提起された。だが合意は得られなかった。あの厳しい世界金融危機を経験した直後でさえ合意できなかったのだから、平時に実のある経常収支不均衡是正策で合意が生まれるはずがないということだ。G7の時は主要先進国だけの会議だったが、BRICsなど新興市場国も参加することで合意形成が難しくなった。

 もう一つはトランプ政権になり、米国は経常収支の不均衡を解決するのに多国間の会議よりも2国間の交渉を重視するようになったことだ。現在中国と貿易交渉中だが、その後はEU,日本とも本格的な交渉を始める予定だ。これまで韓国、カナダ、メキシコなどとの貿易交渉では為替条項を入れてきた。通貨安を貿易競争力向上の手段にしないという条項だ。米国は中国や日本とも同様なスタンスで臨む。これまで韓国ウォン、カナダドル、メキシコペソは為替条項を入れても通貨高になったわけでもない。人民元も若干通貨高に作用した程度だ。

 交渉次第だが、日本はあまり時間をかけずに妥協点を早く見出して交渉を妥結に持ち込みたいところだろう。その場合は通貨への影響はあまりないだろう。暗礁に乗り上げ、交渉が長引くと米国の円高ブラフが出る可能性はある。


※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。

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