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市場養生訓

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第773回

2019年06月18日

 為替レートには政府中央銀行が決めた公のレートと実勢のレートが大幅に乖離するケースがある。発展途上国などで為替管理を強化している国でしばしばみられるケースだ。大きな乖離は組織や個人の立場によって様々な利害を生み出す。それが長く続き程度が大きくなると社会の安定を損なうので、普通は為替レートが一本化するような為替レートのシステムを採用することになる。その場合ほとんどが実勢レートに合わせることが多い。それが通貨の歴史だ。

 イランの通貨はリヤルだ。1ドル=42000リヤル水準が公式レートだが、実勢水準は130,000リヤルだ。3倍も違う。50万リヤルが最も大きな額の紙幣なので100ドルもリヤルに換えれば、数えるのも大変だし、ポケットは札束で膨らんで歩くのも不自然になる。

 米国のイランに対する経済制裁を契機に実勢のリヤル相場は下落を強め始めたわけだが、先週安倍首相がイランを訪問したときにはリヤルの下落が止まった。ルーハニ大統領との会談後には130,000リヤル水準だった相場は120,000リヤルにリヤルが上昇した。

 ちなみに実勢相場とはブラックマーケットのことで、参加者はイラン人だけだ。つまりイランの人は米国とイランの緊張緩和の期待をこの時点では持った。しかし翌日の最高指導者ハメネイ師との会談後は130,000リヤルを超えるリヤル安に振れた。正確に言うなら早朝は前日からのリヤル高が続いていたがすぐにリヤル安に振れた。ペルシャ湾でのタンカーへの攻撃事件が伝わったからだ。

 ブラックマーケットと言うと普通は街角で怪しい者が人目を気にしながら旅行者など外国人からドルなどの外貨を買うケースをイメージするかもしれないが、イランの場合はちょっと違う。もちろん外国人から外貨を買うが、それだけではない。集まった者が互いに売買をしている。ドルを買ったり売ったりしているのだ。つまり外国為替市場なのだ。彼らは街のトレーダーだ。ある街では100人を超える人々が集まっていた。

 彼らのほとんどは普通の人だ。仕事を終えてから集まる人が多いので夕方から市場は活性化する。経済制裁後イランリアルの変動幅が大きいのでチャンスがあると見て参加するのだが、苦しい台所事情もある。

 物価は60%ほど上昇している。輸入品は2倍3倍も珍しくない。為替レートの下落のためだ。だが給料はそれほど上がらない。せいぜい10%程度だ。だから何とか穴埋めをというわけで街角トレーダーが増えているのだ。

 一方で政府の方は原油の輸出は減ったとはいえドル収入はある。政府の支出はリヤル建てなので、職員の給料などで10%ほど支出が増えても為替レートが3倍もドル高になったので、余裕がある。

 つまりイラン政府としてはある程度のドル建て収入を確保できれば経済制裁によるリヤル安は都合がいい。割を食うのは物価高とそれに見合う収入増が見込めない国民だ。だがそれも米国の経済制裁のせいだということで世論をまとめられれば、社会の不安定化の増長を抑制できる。つまり米国との緊張関係の継続は悪くはない。安倍首相の仲介もイランにとって差し迫って必要なわけでもないのだ。

 イランの為替レートが一本化する見込みは薄く、街角のトレーダーは今後も増えるのだろう。
 

※当コラムは毎週火曜日の更新です(火曜日が祝日の場合は休載となります)。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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