FX・CFD・証券取引のことならマネーパートナーズ -外為を誠実に-

市場養生訓

最新の記事

第820回

2020年06月30日

 今週は米国の雇用統計が発表される。通常は金曜日だが、休みのため木曜日に前倒しになる。世界はコロナで大騒ぎだが、米国雇用統計は相変わらず、市場にとって最も重要な統計であり注目が集まる。
 世界のもう一つの注目は香港の国家安全法だ。中国の全人代常務委員会でこの法案が可決されたニュースが伝わった。中長期的に市場にも大きな影響を与える。
 ただ今のところは資本や人材の大量の流出は見られない。米ドル香港ドルの為替レートは変動幅の下限(香港ドルの上限)近辺で推移している。むしろ国家安全法の施行の話が出てから香港ドルは堅調になったほどだ。これは香港通貨庁(HKMA)が米ドルよりも香港ドルの金利をやや高めに維持している要因などによる。
 香港市場が国際金融市場として今後もその地位を維持できるかどうかは人材の流出如何による。香港市場では香港人ばかりでなく多くの外国人が市場に携わっている。金融市場の発展にはシステムと人材がキーになるからだ。
 一般的に国際金融市場の条件として次の点が挙げられる。十分な流動性があること、整備された法とそれに対する高い信頼性、通貨の完全な交換性、低税率、整ったインフラなどだ。それに言論の自由も重要だ。トルコのように当局に批判的な見方をする金融機関やスタッフに取引停止や出頭を求めたりするようでは国際市場としての発展の可能性はない。
 少なくともこれまでの香港市場にはそうした条件が備わっていた。だから国際市場として認知されてきた。為替市場を例にとると、アジアではシンガポールと並んで取引量が多く、世界でも3,4位を争うほどの主要市場の一つだ。東京やシンガポールからだけでなく、欧州からも活発な市場参加がある。
 3年ごとに行われるBISの調査(2019年)の結果だが、2013年には香港市場はアジアでシンガポール、東京に次いで3番目だったが、その後急速に市場は拡大してきた。この背景には中国関係の取引の増加と2047年までは一国二制度が保証される政治の安定と法の信頼性があった。香港ドルは一時安全通貨として経済制裁を受けたロシアなどからの需要もあった。
 ちなみに東京市場は2010年まではアジアでナンバーワンだったが、その後シンガポールに抜かれ、香港にも抜かれてしまった。
 こうした状況が香港の国家安全法の制定で大きく変わる可能性がある。ただ香港での主要金融機関のHSBCやスタンダードチャータード銀行などは国家安全法の支持を表明しており、すぐに多くの金融機関や人材が流出する事態にはならないだろうが、徐々であっても人材の流出は避け難いだろう。そうした事態の進行に伴い、香港の国際金融市場としての地位は低下し、為替レートの変動も避けられない。
 

 

このページの先頭へ

2021年07月27日
2021年07月20日
2021年07月13日
2021年07月06日
2021年06月29日

このページの先頭へ

プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


FX取引(外国為替証拠金取引)、商品CFD取引、証券取引、および暗号資産CFD取引(暗号資産関連店頭デリバティブ取引)に関するご注意


【パートナーズFXおよびパートナーズFXnano】
パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。パートナーズFXおよびパートナーズFXnanoの取引に必要な証拠金は、取引の額の4%以上の額で、証拠金の約25倍までの取引が可能です。法人コースの建玉必要証拠金金額は原則、一般社団法人金融先物取引業協会が算出した通貨ペアごとの為替リスク想定比率を取引の額に乗じて得た額とします。為替リスク想定比率とは、金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第31項第1号に規定される定量的計算モデルを用い算出します。但し、一般社団法人金融先物取引業協会が為替リスク想定比率を算出していない通貨ペアにつきましては、一般社団法人金融先物取引業協会と同様の算出方法にて当社が算出した為替リスク想定比率を使用しております。取引手数料は無料です。なお、外貨両替については1通貨あたり0.20円、受渡取引については1通貨あたり0.10円の手数料をいただきます。

【CFD-Metals】
CFD-Metalsは、取引時の価格またはスワップポイントの変動、およびスワップポイントは支払いとなる場合があることにより、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。CFD-Metalsの取引に必要な証拠金は、取引の額の5%以上の額で、証拠金の約20倍までの取引が可能です。

【証券】
国内上場有価証券の売買等に当たっては、最大で約定代金の2.75%の手数料(消費税込み)、最低手数料は取引形態等により異なり最大で2,750円(消費税込み)をいただきます。有価証券のお預りが無く、一定期間証券口座のご利用が無い場合等は、別紙 ①「手数料等のご案内」に記載の 証券口座維持管理手数料1,100円(消費税込み)をいただきます。国内上場有価証券等は、株式相場、金利水準、為替相場、不動産相場、商品相場等の価格の変動等および有価証券の発行者等の信用状況(財務・経営状況を含む)の悪化等それらに関する外部評価の変化等を直接の原因として損失が生ずるおそれ(元本欠損リスク)があります。

【暗号資産CFD】
暗号資産は法定通貨(本邦通貨又は外国通貨)ではなく、特定の者によりその価値を保証されているものではありません。暗号資産は、代価の弁済を受ける者の同意がある場合に限り代価の弁済に使用することができます。暗号資産CFDは、取引時の価格の変動により、売付時の清算金額が買付時の清算金額を下回る可能性があるため、損失が生じるおそれがあります。また、証拠金の額以上の投資が可能なため、その損失の額が証拠金の額を上回るおそれがあります。売付価格と買付価格には差額(スプレッド)があります。暗号資産CFDの取引に必要な証拠金は、取引の額の50%以上の額で、証拠金の約2倍までの取引が可能です。取引にあたり、営業日をまたいで建玉を保有した場合にはレバレッジ手数料が発生します。

取引開始にあたっては契約締結前書面を熟読、ご理解いただいた上で、ご自身の判断にてお願い致します。

〈商号〉株式会社マネーパートナーズ(金融商品取引業者・商品先物取引業者)
〈金融商品取引業の登録番号〉関東財務局長(金商)第2028号
〈加入協会〉日本証券業協会 一般社団法人金融先物取引業協会 日本商品先物取引協会 一般社団法人日本暗号資産取引業協会