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市場養生訓

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第834回

2020年10月13日

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下落傾向にあったドル人民元が週初、急激に戻した。ドル人民元の変動は普通、緩やかだ。管理変動相場制で当局が通貨の変動をコントロールしているからだ。だが最近は変動が激しい、ように見える。変動相場制の他の通貨の動きが穏やかだからそのように見えるのか知れない。
ドル人民元は5月の終わりに7.17を超える高値を付けた後下落傾向になり、7月後半には7.0を切り、国慶節明けの先週金曜日には6.69台まで下落した。(ドルの下落人民元の上昇)そして昨日は急激に戻し、6.75を超えて上昇した。人民元らしくない動きだが、その直接的な要因は先物の為替予約をする際に課されていた20%の準備金が撤廃されたことだ。ドル買い人民元売りの先物買いにはそれだけ余分なコストがかかっていた。
中国人民銀行は人民元安を抑制するためにこうした措置をとっていたが、最近の人民元高傾向とりわけ国慶節明けの急激な人民元の上昇(ドル人民元の下落)は行き過ぎと判断した。それでドル買い人民元売りをしやすくした。それに市場が反応した。
そもそも2005年の人民元切り上げ以降、中国の為替政策の基本方針の一つは漸進主義だ。急激な変動が続くときは必ず当局が介入する。為替の売買によることもあれば、規制の導入や撤廃によることもある。
5月以降人民元高(ドル人民元の下落)が進んだ要因としては主に金利要因、つまりドル金利がゼロ近辺で続く見込みに対して人民元は利下げを急いでいない。前回の会合でも金利を据え置いた。10年債の比較でも金利差は2%ほどある。短期金利も人民元の方がはるかに高い。もう一つの要因としては中国の景気回復が早いことだ。コロナウイルスの影響が比較的軽微のためだ。今年のGDPもプラス成長の見込みだ。
そうした状況の中で中国の国債や株などに外国から資金が流入した。これは当局が資本規制の緩和策を採ったことによる。中国の金融商品を買いやすくなった。それで人民元の買いが増えた。
ところでこうした動きを見て人民元の国際化が進み、世界のドル依存の体制が崩れるのではないかとの見方もある。GDPや軍事力で米国の背中が次第に大きく見えるようになっている。コロナ後は中国の世界でのプレゼンスが一段と大きくなると言われる。その流れで人民元も、というわけだ。
だが世界の外貨準備の通貨構成を見ても人民元は2%強だ。一方でドルは60%を超える。人民元は着実に増えていることは確かだが、まだドルの背中は見えていない。そのうち5%強の円の背中は見えてくるだろうが、20%のユーロの背中も見えていない。国際取引の決済手段としてもドルとは比べ物にならない。
人民元の国際化とは人民元が世界的に信用されることだ。その観点で見ると資本規制の導入や撤廃を頻繁に行うのはマイナスになる。
 ドル人民元は大統領選までは6.70近辺でのレンジ相場になるのではないか。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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