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市場養生訓

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第851回

2021年03月02日

 長期金利の動向が資産市場全般への影響を増している。昨日はオーストラリアの中央銀行(RBA)が長期金利の抑制に動いた。金融緩和政策の一環で購入している長期債の購入額を倍にした。長期債の価格は上昇し利回りは低下した。
 問題は最近同じように長期金利が上昇傾向にある他の主要国の中央銀行がRBAと同じような政策を採るかだ。
 特に最も影響力のある米国の中銀(FED)がどうするか。FEDのパウエル議長と財務長官のイェレンは雇用の拡大、低所得者層の引上げを目指している。これまでの株価の上昇が資産格差の拡大に寄与してきたとの認識は共通している。 一方現在の長期金利の上昇は株価下落の要因になっている。政策金利を引き上げずに、金融システムが不安定にならない程度に株価が調整するのは彼らにとってむしろ好都合だ。
 その点ではFEDはRBAのように長期債の購入に向かう必要性はない。つまり短期金利は現行水準を維持し、長短の金利水準が開くというイールドカーブのスティープニング化が続くということだ。
これは経済にもプラス要因だ。銀行が貸し出しを増やすインセンティブに繋がるからだ。銀行は貸し出しの際、貸出金利にマージンを上乗せする。これが収益になるが、収益源はもう一つある。銀行は長期の貸し出しに見合う資金を短期で調達するのが一般的だ。つまり長短の金利差が大きければ収益機会も拡大する。
 さて為替レートへの影響だが、長期金利と短期金利のどちらが影響を与えるだろうか。一般論としては両方だ。長期金利は機関投資家などの投資行動に影響を与える。一方短期金利は銀行ディーラーなどの為替ポジションの持ち越しコストを通じて影響を与える。金利差が開けば高い方の金利をロングにしているポジションのコストは低下することで、ロングポジションを誘発する。
 イールドカーブのスティープニング化を前提とすると、長期金利の方はドル買いになるが、短期金利の方では買いのインセンティブは生じない。むしろ現在のようにゼロ金利水準が長く続いている状況ではドル売りの背景にもなる。
 イールドカーブのスティープニング化は景気が改善していくときに表れる形状である。もしそうならば短期金利もいずれ上昇し、イールドカーブが上方にシフトする。
 そうなればドル買いになる。一方別の読み方としては一時的にインフレ期待が高まるときにも表れる形状だ。その場合はスティープニング化の動きが止まりフラット化へ転じる可能性がある。そうなればドル買いは弱くなる。
 実際には今後両局面が繰り返されその都度レートは振られながら、トレンドを形成していくのだろう。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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