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市場養生訓

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第855回

2021年03月30日

 ニューヨークベースの投資銀行の損失のニュースが流れた。その中に野村証券ニューヨークも含まれていた。先週金曜日に巨額の株の売りが出たところから広く知られるようになった。
 投資銀行のビジネスの一つにプライムブローカレッジのサービスがある。顧客のヘッジファンドに貸し出しをはじめ、株、債券、為替などのトレーディングのサービスを一括して提供する。顧客はプライムブローカーである投資銀行の信用で市場取引する。ただ一定の限度額の範囲内でマージン(証拠金)も必要になる。今回大きな損失を起こしたヘッジファンドはプライムブローカレッジのサービスを複数の投資銀行から受けていた。ポジションもそれだけ得膨らむ。
 ところがこのヘッジファンドは保有株式の想定外の下落でマージン不足になり、結局保有株式の処分を迫られた。いずれの投資銀行も損失を最小限に抑える必要があり、株価に大きな下落圧力を与えないような処分の仕方を協議したがまとまらず我先にと処分に走った。早ければそれだけ損失が少なく済むからだ。野村証券やクレジットスイスは遅れたため損失が膨らんだとされる。それが先週金曜日の動きだ。
 こうした事例は珍しくはない。もっとスケールが大きかったのはLTCMの破綻だ。LTCMはヘッジファンドのドリームチームと呼ばれた。ノーベル経済学賞を受賞した学者、元FRBの副議長などをパートナーに、元ソロモンブラザーズ債券部門の責任者が立ち上げた米国のヘッジファンドだ。各国の株や債券に投資していたがロシアルーブルの33%の切り下げで資産の44%を失った。LTCMは担保不足になり金融機関からポジションの解消を迫られた。市場ではLTCMがロングにしているものは売られ、ショートにしているものは買われた。保有ポジションの価値は一層低下した。
 LTCMのポジション解消の動き次第で金融システムの危機の懸念を抱いたニューヨーク連銀は、LTCM救済のため欧米金融機関14行からの出資を仲介した。ほとんどの金融機関は同様なポジションを抱え金融市場がパニックになれば自分たちも損失が拡大するため救済に応じた。
 結局LTCMのポジションは出資した金融機関の管理下で運営され、FRBの利下げも功を奏し市場が落ち着き、徐々に整理されるとともにLTCMは消えた。
 ところがそれから2年もしないうちにLTCMの責任者は新しいヘッジファンドを立ち上げ市場に戻ってきた。
 今回のヘッジファンドの責任者も以前中国の銀行株でのインサイダートレーディングで有罪になり、当局に多額の罰金を支払う羽目になった。彼もそれから1年ほどで市場に戻り、今回のヘッジファンドを立ち上げた。
 彼らのタフさには驚くばかりだが、すぐに顧客として取り込もうとする投資銀行の貪欲さも相当なものだ。ヘッジファンドは彼らにとって多額の手数料を得られる上客なのだ。
 今回はLTCMのときのような金融システムのリスクに繋がるような懸念はないようだが、市場には常にこうしたリスクが内在していることを忘れてはならない。
 ところで今週は米国の雇用統計や日銀短観の数字が発表される。いずれもポジティブな数字が見込まれる。パンデミックとワクチンの展開は米国と欧州の差異を際立たせた。現在のドル高基調はユーロドルからも後押しされ、堅調なものになっている。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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