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市場養生訓

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第863回

2021年06月01日

 人民元の上昇傾向が続いている。直近のレートはドル人民元(CNY)6.37水準だが、1年で10%以上の人民元高になっている。特に今年3月終わりからの傾向は顕著だ。
 最近の人民元高の要因としては、ドル指数の下落傾向に見られるように全般的なドル安傾向と、中国の輸出や資本流入が生み出す人民元の需要増がある。つまり市場の為替需給を反映したものだ。
 だがここにきて当局は市場の為替需給の調整に乗り出した。中国人民銀行は昨日金融機関の外貨準備率引き上げに動いた。5%から7%への引き上げだ。これにより外貨買い人民元売りを促す。この措置を受けてドル人民元は若干戻っている。
 ただ今回の措置は人民元高のスピード調整であり、相場を反転させるようなものではないと考えられる。よってドル人民元のトレンドが反転するとは考えにくい。
 ところで先週、スイスがEUとの市場アクセスを確固にするための協議を打ち切った。BREXITにちなんでSWEXITとも言われる。スイスは元々EUに加盟しておらず、EUとは包括的な協定を結ばずに、個別にたくさんの協定を結んで実質的に貿易や課税などでEUメンバーとあまり変わらない境遇を享受してきた。いわば特別待遇だ。こうした状況を改善してEUメンバーに似た条件で包括的な協定を結び直そうとしたが失敗した。スイスは経済的なメリットよりも移民問題などで伝統的な直接民主主義が脅かされることを警戒した。
 その結果当面は既存の個別協定を維持するしかないが、それらの延長や更新は保証されない。つまりEUとスイスの関係は中長期的に不安定になる。
 これはスイスにとって経済的にマイナス要因だが、市場でのスイスフランの動向には今のところほとんど影響はない。当面は従来と変化はなく影響は中長期的だからだ。
 一方EUにとってもマイナス要因ではある。スイスはEUにとってEU外での貿易相手としては4番目に多い。だがユーロへの影響は全く見られなかった。
 むしろ全般的なドル安やドイツのインフレ率の上昇によるECBのテーパリングの可能性の方が市場での影響がはるかに大きいからだ。
 それにしてもBREXITとSWEXIT、民主主義の基盤が比較的強固とみなされる国が距離を置かざるを得なくなるEUという共同体の行く末はどうなのだろう。

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プロフィール

  • 著者近影 小口 幸伸(おぐちゆきのぶ)
    1950年生まれ。通貨・国際投資アナリスト。 元ナショナルウェストミンスター銀行国際金融本部長。 横浜国立大学経済学部卒業後、シティバンク入社。変動相場制移行後間もなく為替ディーラーとして第一線で活躍。シティバンクのチーフディーラーとなる。その後ミッドランド銀行為替資金本部長を歴任。


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