先週のドル・インデックスは94あたりの水準で下げ渋る動きを見せ、結果としてユーロ/ドルも1.1400ドルを挟んだもみ合いの展開となった。その意味では、とりあえず“ドル安の修正”も一服といった感があるものの、ことドル/円については一段のドル安、というより円高の方が進む状況となっている。多くの市場関係者が指摘している通り、本邦政府・当局があからさまな介入に踏み切りにくい状況にあることから、当面は市場に円買い安心感が漂いやすい。
だからといって、ここから安易に円買いを仕掛けることも少々躊躇われる。前回の本欄でも述べたように、今週14-15日に予定されるワシントンG20(財務相・中央銀行総裁会議)で「世界経済のリスクが一頃よりも後退した」との認識を各国が共有したり、2月に行われた上海G20での合意をもとに「財政出動などによる各国の対応を一層強化する」などといった強い協調姿勢がアピールされたりすれば、あらためて市場にリスク・オンのスイッチが入る可能性もあると思われるからだ。
チャート上では、何よりドル/円の4月の月足ロウソクが、今のところ31カ月移動平均線(31ヵ月線)を下抜けた状態にある点に注目しておきたい。現在、31ヵ月線は112.65円の水準に位置しており、4月は月初めから同水準を下回ってのスタートとなった。
振り返れば、2012年11月に月足ロウソクは31ヵ月線を明確に上抜け、その時点からドル/円の本格的な上昇トレンドが始まったわけである。それだけ31ヵ月線との位置関係は重要であり、現在、同線を下抜ける展開となっていることは軽視できない。
なお、同じドル/円の月足チャート上に一目均衡表を描画してみると、今年10月あたりから月足「雲」上限の水準が一気に切り上がることもわかる。このことと、市場における米追加利上げ観測の高まりが平仄を合わせるような格好となるかどうか、少々気が早いとは思うが、個人的には興味深い。とまれ、今後も時折ドル/円の月足チャートをチェックすることは重要と思われる。
すでに多くの市場関係者に指摘されているが、当面のドル/円の下値の目安は、一つにヘッド・アンド・ショルダーズ・トップ(三尊天井)完成後のセオリーに基づく垂直計算から106円台前半、あるいは2011年10月安値から昨年6月高値までの上昇に対する38.2%押し=106円台半ばあたりと見られる。また、なかには現在105.85円に位置している200カ月移動平均線(200ヵ月線)が意識されやすいと見る向きもあり、概ね105~106円台あたりが試されるのではないかと見る向きが多いようだ。
非常に重要な節目と考えられていた110円を下抜けてしまったからには、当面、ある程度は目線を下げて臨まねばなるまい。ただ、先週の下げがやけに急激なものであっただけに、今週あたりは一定の揺り戻しもあり得るものと見られる。先週7日、8日には日経平均株価が下げ渋る展開となり、少なくとも株安が主導する形での円高進行はとりあえず一服したようにも思われる。
少々不気味なのは、ユーロ/ドルが1.1400ドルを挟んでのもみ合いを続けながら高止まりとなっている点である。まずは、目下のもみ合いレンジを上下どちらに放れるかに注目。「ユーロに先高観」と見る向きも少なくないようだが、足下でギリシャ支援交渉に再び不透明感がくすぶり始めている点や、例の「パナマ文書」を巡る問題が英国のEU残留に影を落とす可能性が指摘され始めている点なども気に留めておく必要はあろう。
(04/11 08:55)