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第554回 今しばらく「トランプリスク」が円の下値を支える!?

2016年10月24日

先週は、とにもかくにもユーロ/ドルの下げが際立つこととなった。先々週の週末14日に大節の一つである1.1000ドルを終値で下回ったことにより、週明け17日こそ一旦反発する動きも見られたが、20日のECB理事会を通過して、週末にかけては1.0950ドルの節目はおろか1.0900ドルをも下抜けるという急激な下げであった。
個人的には1.0950ドルあたりで一旦下げ渋ると考えていたが、それは少々甘い見立てであった。投機筋は一定の値動きと収益機会に相当飢えているということだろう。
もちろん、ユーロ売りの要因はECB理事会後のドラギ総裁発言の内容に求められるわけだが、周知のとおり、ドラギ総裁によれば「政策委員会は今回の会合で量的緩和(QE)プログラムの延長もテーパリングも議論しなかった」という。
つまり、実際にはさほどハト派的な内容ではなかったものの、市場は「テーパリングも議論しなかった」というコメントの方にあえて強く反応した格好。基本的にドルが強めの基調を継続していることから、動きやすい方(ユーロの下げ)に市場はベットした方が得策であると考えたようだ。
すでに、ブレグジットショック後の6月24日につけた安値=1.0909ドルをも下抜ける展開となっていることから、当面は3月初旬につけた1.0820ドル台の安値から重要な節目の一つである1.0800ドルあたりの水準が意識されやすいと見られる。
足下のユーロ/ドルの下げは、ややオーバースピード気味であるようにも見えるが、昨年10月半ばから12月初旬にかけて1.1500ドル処から1.0500ドル処まで一気に下落した場面を想い起せば、もう少し下値余地を拡げてもおかしくはないとも言える。少し長い目で見れば、いずれ1.0700ドルあたりの水準も視野に入ってくる可能性があろう。
 
一方で、このところのドル/円は一目均衡表の日足「雲」上限に下値を支えられているものの、いまだ9月2日高値=104.32円を終値で上抜けることができずにいる。前回の本欄で「トランプリスクがドルの上値をある程度抑える可能性がある」と述べたが、実際には「円の下値を支える」といった部分の方が大きいようである。
周知のとおり、先週20日に米大統領選の第3回TV討論会が行われたが、依然としてクリントン氏優位の情勢に変わりはないように思われた。米WSJ紙は、今回のTV討論会について「すでにほぼ決心している有権者の気持ちをさらに固める以上の判断材料になった可能性は低い」と報じ、トランプ氏はクリントン氏に対する反撃のチャンスを逸したとの見方を示していた。結果、所謂「トランプリスク」はだいぶ後退したように思われるものの、完全に払しょくすることもできず…やはり「当面のドルの上値は節目、節目で押さえられやすい」ということになるのではないかと思われる。
逆に言えば、米大統領選を通過した後の相場は、ある程度動意づく可能性が高いとも言えよう。選挙戦の勝敗の行方はいまだ不透明としか言えない状況であるが、それだけに勝敗が決した後の市場からは先行き不透明な要素の一つが払しょくされる。

市場では、もはや12月米利上げが既定路線となりつつあり、基本的にドルは強含みの状態にある。また、足下では日本株が買い優勢の展開となっており、日経平均株価は重要な節目の一つである1万7250円処をクリアに上抜けるかどうかの正念場にある。同水準を上抜けると、そこからは上値余地が拡がり易く、日経平均株価の堅調な推移がドル/円の下値を支える役割を果たすことにも期待したい。前回も述べたように、まずは105円の心理的節目、さらには昨年6月高値から今年6月安値までの下げに対する23.6%戻し=105.34円あたりが一つの上値の目安になると見られる。
(10/24 08:55)

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プロフィール

  • 著者近影 田嶋 智太郎(たじまともたろう)
    昭和63年、慶応義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJ証券)勤務を経て、経済ジャーナリストに転身。これまでにNHK「くらしの経済」、テレビ朝日「やじうまプラス」などのコメンテータを務め、年間で全国およそ200ヶ所の講演を続ける。現在は日経CNBC「一発回答!銘柄ナビ」レギュラー。「株に成功する技術と失敗する心理」(KKベストセラーズ)など著書も多数。

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